
調剤基本料は、薬局が処方箋を受け付けた際に算定できる基本的な報酬です。この基本料は、医薬品の備蓄(廃棄や摩耗を含む)などの体制整備に関する経費を評価したものであり、薬局経営の効率性を踏まえて区分が設定されています。
2024年度の調剤報酬改定では、調剤基本料の点数が以下のように設定されています。
薬剤師として知っておくべき重要なポイントは、これらの区分がどのような基準で分けられているかということです。集中率(特定の医療機関からの処方箋の割合)や処方箋の受付回数、会社グループの規模などが基準となっており、それぞれの薬局の状況に応じて適用される区分が決まります。
また、複数の保険医療機関から交付された処方箋を同時に受け付けた場合、2回目以降の調剤基本料は所定点数の80%に相当する点数で算定されます(小数点以下第一位を四捨五入)。これは薬剤師が効率的に調剤業務を行うことを考慮した仕組みです。
2024年度の調剤報酬改定では、調剤基本料に関して大きく3つの変更点がありました。薬剤師として、これらの変更点を正確に理解することが重要です。
調剤基本料1〜3はそれぞれ3点ずつ引き上げられました。これは地域医療に貢献する薬局の整備を進めることや、薬局で働く職員の賃上げを促進することを目的としています。特に、薬剤師の処遇改善は大きな社会的課題となっており、この点数引き上げはその一環と言えるでしょう。
これまで同一建物内にある医療機関の処方箋受付が合計して4,000回を超える場合、調剤基本料2に区分されていましたが、今回の改定では、1か月における処方箋の受付回数が4,000回を超え、かつ処方箋受付回数が多い上位3つの保険医療機関の処方箋による調剤の割合が合計で7割を超える薬局も対象となりました。これは、医療モールなどで処方箋を受ける薬局を想定した改定です。
特別調剤基本料が「A」と「B」に細分化されました。特別調剤基本料Aは医療機関と同一敷地内にあり、処方箋集中率が50%を超える薬局が対象で、7点から5点に引き下げられました。特別調剤基本料Bは新設され、調剤基本料の施設基準に係る届け出を行っていない薬局が対象となり、3点が算定されます。
これらの変更は、地域医療を支える薬局の役割をより公平に評価することを目的としています。薬剤師としては、自分の勤務する薬局がどの区分に該当するのか、また改定によってどのような影響があるのかを把握しておくことが重要です。
調剤基本料の区分によって、薬剤師が算定できる点数が異なります。それぞれの区分の特徴と算定要件を詳しく見ていきましょう。
調剤基本料1(45点)
調剤基本料1は、調剤基本料2、3、特別調剤基本料A・Bのいずれにも該当しない保険薬局が算定できます。多くの一般的な薬局がこの区分に該当します。また、「医療を提供しているが、医療資源の少ない地域」に所在する保険薬局は、一定の施設基準を満たせば、通常の処方箋集中率や処方箋受付回数の要件にかかわらず、調剤基本料1を算定することができます。
調剤基本料2(29点)
調剤基本料2は、主に以下のいずれかの条件を満たす薬局が対象となります。
調剤基本料3(イ・ロ・ハ)
調剤基本料3は、大規模チェーン薬局や特定の医療機関との関係が深い薬局が対象となります。「イ」「ロ」「ハ」の3つの区分に分かれており、それぞれ以下の条件で算定されます。
薬剤師としては、自分の勤務する薬局がどの区分に該当するのかを把握し、適切な算定を行うことが重要です。特に、処方箋の受付回数や集中率は定期的に確認し、区分の変更がある場合は速やかに対応する必要があります。
特別調剤基本料は、2024年度の調剤報酬改定により「A」と「B」の2つに区分されました。これらの区分は、薬局の立地条件や施設基準の届出状況によって適用されるものです。
特別調剤基本料A(5点)
特別調剤基本料Aは、医療機関と同一敷地内にあり、処方箋集中率が50%を超える薬局が対象となります。以前は7点でしたが、2024年度の改定で5点に引き下げられました。
この背景には、2016年に厚生労働省が病院と同じ敷地内に薬局があることを解禁したことがあります。患者にとっては便利になった一方で、薬局としての独立性が確保されないという課題が残っているため、点数が減算されています。
特別調剤基本料B(3点)
特別調剤基本料Bは2024年度の改定で新設されたもので、調剤基本料の施設基準に係る届け出を行っていない薬局が対象となります。この区分は、適切な施設基準の届出を促進するための措置と言えるでしょう。
薬剤師が地域医療に貢献するためには、単に処方箋を受け付けて調剤するだけでなく、地域のニーズに応じた様々なサービスを提供することが求められています。例えば、在宅医療への参加、健康サポート機能の充実、多職種連携の推進などが挙げられます。
特に、「地域支援体制加算」は、地域医療に貢献する薬局を評価するための加算であり、調剤基本料と併せて算定することができます。ただし、2024年度の改定では地域支援体制加算が一律でマイナス7点となっており、その影響は大きいものの、他の加算を含めてしっかりと基本料の加算を取りきることができれば、プラスマイナス0もしくは若干のプラスを目指せる点数体系となっています。
薬剤師として、地域医療への貢献を意識しながら業務を行うことは、患者さんへの質の高いサービス提供につながるだけでなく、薬局の経営面でもプラスとなる可能性があります。
2024年度の調剤報酬改定では、調剤基本料1〜3がそれぞれ3点ずつ引き上げられました。この背景には、薬剤師をはじめとする医療従事者の処遇改善という大きな社会的課題があります。
近年、薬剤師不足が深刻化しており、特に地方や中小の薬局では人材確保が難しくなっています。政府は医療機関などに対して職員の賃上げを要請しており、調剤基本料の引き上げはこうした流れを受けた措置の一環と言えるでしょう。
薬局経営者にとっては、この点数引き上げを薬剤師の処遇改善に充てることが期待されています。具体的には、基本給の引き上げ、賞与の増額、福利厚生の充実などが考えられます。これにより、薬剤師の離職防止や新規採用の促進につながることが期待されています。
一方で、薬剤師自身も自分の価値を高めるための努力が求められています。例えば、専門性の向上、多職種連携能力の強化、患者コミュニケーション能力の向上などが挙げられます。これらのスキルを身につけることで、より高い処遇を得られる可能性が高まります。
また、薬局としても単に点数を算定するだけでなく、地域のニーズに応じたサービスを提供することで差別化を図り、安定した経営基盤を築くことが重要です。例えば、在宅医療への積極的な参加、健康サポート薬局としての機能強化、多職種連携の推進などが考えられます。
厚生労働省:令和6年度診療報酬改定と賃上げについて〜今考えていただきたいこと(薬局)〜
調剤基本料の引き上げは、薬剤師の処遇改善という観点からは歓迎すべき改定ですが、それだけで薬剤師不足の問題が解決するわけではありません。薬局経営者、薬剤師、行政が一体となって、持続可能な薬局経営と質の高い薬剤師サービスの提供を実現していくことが求められています。
調剤基本料には、様々な加算と減算があります。薬剤師として、これらを正確に理解し、適切に算定することが重要です。
主な加算
地域医療に貢献する薬局を評価するための加算です。2024年度の改定では一律でマイナス7点となりましたが、地域のニーズに応じたサービスを提供する薬局にとっては重要な加算です。
後発医薬品の調剤割合に応じて算定できる加算です。後発医薬品の使用促進は医療費削減の観点から重要視されており、積極的に取り組むことが求められています。
地域の医療機関や他の薬局との連携を評価する加算です。多職種連携を推進することで、患者さんにより質の高い医療サービスを提供することができます。
継続的に患者さんの薬学的管理・指導を行うかかりつけ薬剤師を評価する加算です。患者さんとの信頼関係を構築し、より質の高い服薬指導を行うことが求められています。
主な減算
複数の保険医療機関から交付された処方箋を同時に受け付けた場合、2回目以降の調剤基本料は所定点数の80%に相当する点数で算定されます(小数点以下第一位を四捨五入)。
医療機関と同一敷地内にあり、処方箋集中率が50%を超える薬局は特別調剤基本料A(5点)が適用され、通常の調剤基本料より大幅に減算されます。
この場合、処方箋の受付1回につき所定点数の50%に相当する点数で算定されます(小数点以下第一位を四捨五入)。
薬剤師として、これらの加算・減算の仕組みを理解し、適切に算定することは、薬局の経営面だけでなく、患者さんへの質の高いサービス提供にもつながります。特に、地域のニーズに応じたサービスを提供し、加算を積極的に取得することで、薬局の収益向上と患者満足度の向上の両立を図ることができるでしょう。
また、定期的に算定要件を確認し、必要な届出を行うことも重要です。特に、2024年度の改定では様々な変更点があるため、最新の情報を