ミヤBMの効果と便秘・下痢改善への働き

ミヤBMの効果と便秘・下痢改善への働き

ミヤBMの効果と特徴

ミヤBMとは
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酪酸菌製剤

ミヤBMは宮入菌(酪酸菌)を含む医療用医薬品で、腸内環境を整える整腸剤です

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善玉菌の一種

腸内細菌のバランスを整え、便秘や下痢などの症状改善に効果を発揮します

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高い生存性

芽胞形成により胃酸や抗生物質に強く、生きたまま腸まで届きやすい特徴があります

ミヤBMの主成分と作用機序

ミヤBM(ミヤビーエム)は、「宮入菌末」を主成分とする医療用医薬品の整腸剤です。宮入菌は正式名称を「Clostridium butyricum MIYAIRI 588」といい、酪酸菌の一種として知られています。

 

ミヤBMの主な特徴は、腸内環境を整える「善玉菌」として機能することです。1g中に宮入菌末40mgを含有しており、服用することで腸内細菌のバランスを整え、腹痛・下痢・便秘などの症状を改善します。

 

宮入菌の最大の特徴は、「芽胞」と呼ばれるカプセル状の保護膜を形成する能力です。この芽胞により、以下のような優れた特性を持ちます。

  • 胃酸に対する高い耐性(pH1.0?5.4の胃液中でも死滅しない)
  • 抗生物質に対する耐性
  • 熱に強い性質

これらの特性により、宮入菌は生きたまま腸まで到達しやすく、効率的に腸内で作用することができます。腸内で増殖した宮入菌は、酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を産生し、腸内環境を改善します。

 

ミヤBMと便秘・下痢への効果

ミヤBMは便秘と下痢の両方に効果を示す特徴的な整腸剤です。臨床データによると、下痢に対しては97%(117/121例)、便秘に対しては67%(6/9例)の改善率が報告されています。

 

便秘への効果メカニズム。

  1. 酪酸産生による腸管運動の活性化
  2. 腸内環境の正常化による自然な排便促進
  3. 大腸のエネルギー源となり、蠕動運動を促進

下痢への効果メカニズム。

  1. 腸内細菌叢のバランス回復
  2. 有害菌の増殖抑制
  3. 腸管バリア機能の強化

特に注目すべきは、ミヤBMが産生する「酪酸」の働きです。酪酸は大腸の主要なエネルギー源となり、腸の蠕動運動を促進します。また、腸のバリア機能を強化し、傷ついた腸を修復する効果もあります。

 

さらに、ミヤBMは抗生物質との併用が可能な点も大きな特徴です。抗生物質は善玉菌も殺してしまうため、一般的な整腸剤との併用は推奨されていませんが、ミヤBMは抗生物質に対する耐性を持っているため、抗生物質治療中の腸内環境悪化を防ぐ目的でも使用されます。

 

ミヤBMとビオフェルミンの違い

整腸剤として広く知られるミヤBMとビオフェルミンですが、含まれる菌の種類や作用機序に大きな違いがあります。

 

【主な違い】

特徴 ミヤBM ビオフェルミン
含有菌 酪酸菌(宮入菌) 乳酸菌
産生物質 酪酸・酢酸 乳酸
抗生物質耐性 強い(芽胞形成) 弱い
胃酸耐性 強い 比較的弱い
医薬品区分 医療用医薬品 一般用医薬品/医療用医薬品

ミヤBMに含まれる酪酸菌は、乳酸ではなく「酪酸」や「酢酸」を産生します。これらは短鎖脂肪酸と呼ばれ、腸内環境において重要な役割を果たします。

 

酪酸の主な働き。

  • 大腸の主要エネルギー源となる
  • 他の善玉菌が棲みやすい環境を作る
  • 腸のバリア機能を強化する
  • 傷ついた腸を修復する

酢酸の主な働き。

  • 脂肪の蓄積を抑制する
  • 全身を巡って代謝に関与する

一方、ビオフェルミンに含まれる乳酸菌は乳酸を産生し、腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑制します。どちらも整腸作用がありますが、作用機序が異なるため、症状や目的によって使い分けることが効果的です。

 

ミヤBMの皮膚疾患への応用

ミヤBMは整腸剤としての効果だけでなく、意外にも様々な皮膚疾患の治療にも応用されています。「ビオチン療法」と呼ばれる治療法の一環として、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症などの皮膚疾患に対して使用されることがあります。

 

ビオチン療法の基本的な処方例。

  • シナール:1回1〜3錠(毎食後)
  • ビオチン:1回1包(毎食後)
  • ミヤBM:1回1包(毎食後)

この治療法の理論的背景は、皮膚の湿疹の一部がビオチン(ビタミンB7)の欠乏によって引き起こされるという知見に基づいています。ミヤBMが選択される理由は、腸内で作用することでビオチンの生成を促進する効果があるためです。

 

皮膚と腸内環境の関連性(腸-皮膚軸)は近年注目されている研究分野であり、腸内細菌叢の改善が皮膚症状の緩和につながる可能性が示唆されています。ミヤBMによる腸内環境の改善が、間接的に皮膚の健康状態を向上させると考えられています。

 

皮膚疾患と腸内細菌叢の関連性についての研究

ミヤBMの喘息・肥満への研究

最新の研究では、ミヤBMの効果が消化器系の問題だけでなく、喘息や肥満などの全身性疾患にも及ぶ可能性が示唆されています。特に注目されているのが、酪酸菌による腸内環境の改善が肥満関連喘息に与える影響です。

 

2023年から進行中の研究では、通常体重喘息患者および肥満喘息患者を対象に、ミヤBMを半年間投与する多施設共同前向き試験が計画されています。この研究は、酪酸産生菌が肥満喘息の病態に与える効果を検証することを目的としています。

 

予備的な研究結果では、肥満マウスにおいて酪酸菌の投与が気道過敏性や炎症を軽減する可能性が示されています。これは、腸内細菌叢の改善が全身の炎症状態に影響を与え、結果として喘息症状の緩和につながるという「腸-肺軸」の概念を支持するものです。

 

また、酪酸には脂肪細胞の蓄積を抑制する効果があることから、肥満の予防や改善にも役立つ可能性があります。腸内で産生された酢酸は全身を巡って脂肪細胞に到達し、脂肪の蓄積を抑制する作用があると考えられています。

 

これらの研究は、ミヤBMの効果が単なる腸内環境の改善にとどまらず、全身の健康状態に広く影響を及ぼす可能性を示唆しています。今後の研究結果が待たれるところです。

 

酪酸誘導による腸内細菌叢を標的とした肥満喘息の制御に関する研究

ミヤBMの正しい服用方法と注意点

ミヤBMを最大限に活用するためには、正しい服用方法と注意点を理解することが重要です。

 

【標準的な用法・用量】

  • 成人:通常1日1.5?3gを3回に分けて経口服用
  • 年齢や症状により適宜増減

【服用のタイミング】
最も効果的なのは食後の服用です。食事と一緒に摂取することで、胃酸の影響を軽減し、より多くの宮入菌が生きたまま腸に到達できます。

 

【服用期間】
整腸剤は即効性のある薬ではないため、効果を実感するには継続的な服用が必要です。一般的に2週間から1ヶ月程度の継続服用が推奨されます。症状が改善した後も、腸内環境の安定化のために一定期間の服用継続が望ましいでしょう。

 

【注意点】

  1. 副作用はほとんど報告されていませんが、まれにアレルギー反応が起こる可能性があります
  2. 他の薬剤と同時に服用する場合は、医師や薬剤師に相談することをお勧めします
  3. 重度の消化器疾患がある場合は、専門医の指導のもとで使用してください

【市販薬との関係】
ミヤBMは医療用医薬品ですが、同じ宮入菌を含む市販薬として「強ミヤリサン錠」があります。強ミヤリサン錠には1錠あたり約1億個の宮入菌が含まれており、ミヤBMと同様の効果が期待できます。処方箋なしで購入したい場合の選択肢となります。

 

【保存方法】
高温多湿を避け、室温で保存してください。特に夏場は冷蔵庫での保存も検討すると良いでしょう。ただし、凍結は避けてください。

 

効果を最大化するためには、規則正しい生活習慣や食生活の改善も併せて行うことが重要です。十分な水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動なども腸内環境の改善に役立ちます。

 

ミヤBMと食物繊維の相乗効果

ミヤBMの効果をさらに高めるためには、食物繊維との組み合わせが効果的です。特に注目されているのが、グアーガム分解物(PIGG)などのプレバイオティクスとの併用です。

 

プレバイオティクスとは、腸内の有益な細菌の成長や活動を選択的に刺激する非消化性食品成分のことで、いわば「善玉菌のエサ」となるものです。ミヤBMに含まれる宮入菌(プロバイオティクス)とプレバイオティクスを組み合わせることで、シンバイオティクス効果が期待できます。

 

【おすすめの食物繊維】

  1. 水溶性食物繊維
    • グアーガム
    • イヌリン
    • ペクチン
    • β-グルカン
  2. 不溶性食物繊維
    • セルロース
    • リグニン
    • ヘミセルロース

水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなりやすく、宮入菌の増殖や活動を促進します。特にグアーガムは、腸内で発酵されて短鎖脂肪酸を産生するため、ミヤBMとの相性が良いとされています。

 

実際の食品では、以下のものがミヤBMとの併用に適しています。

  • オートミール(β-グルカン)
  • バナナ(ペクチン)
  • りんご(ペクチン)
  • ごぼう(イヌリン)
  • 海藻類(アルギン酸)

これらの食品を意識的に摂取することで、ミヤBMの効果を最大化し、腸内環境の改善をより効率的に進めることができます。特に便秘傾向がある方は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂取することが重要です。

 

整腸剤と食物繊維の組み合わせに関する詳細情報
整腸剤と食物繊維を組み合わせることで、単独使用よりも高い効果が期待できます。ミヤBMによる腸内細菌叢の改善と、食物繊維による腸内環境の整備が相乗的に作用し、より健康的な腸内環境の構築につながるでしょう。