
2024年度の診療報酬改定において新設された「特定薬剤管理指導加算3」は、薬剤師による丁寧な服薬指導を評価するための加算です。この加算は「イ」と「ロ」の2区分に分かれており、それぞれ異なる状況で算定することができます。本記事では特に「特定薬剤管理指導加算3ロ」に焦点を当て、その算定要件や注意点、2025年4月からの点数改定について詳しく解説します。
特定薬剤管理指導加算3ロは、以下の2つのケースで算定することができます。
いずれの場合も、患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定することができます。つまり、同じ薬剤について2回目以降は算定できないということです。
特定薬剤管理指導加算3ロの点数は、2024年6月の新設時点では5点でした。しかし、2025年4月1日からは点数が引き上げられ、10点となります。
この点数引き上げの背景には、2024年10月1日から長期収載品の選定療養が施行され、患者への説明など保険薬局の業務負担が増加していることが挙げられます。厚生労働省は、この業務負担の増加を踏まえ、評価の見直しを行ったのです。
点数改定のポイント。
この改定は服薬管理指導料の加算だけでなく、かかりつけ薬剤師指導料における同加算についても同様の見直しが行われます。
特定薬剤管理指導加算3ロを算定する際には、以下の点に注意する必要があります。
特定薬剤管理指導加算3ロの算定要件の一つである「選定療養」について理解を深めましょう。
選定療養制度とは、2024年10月1日から施行された制度で、後発医薬品が存在する先発医薬品(長期収載品)を患者が希望して使用する場合に、その差額を患者が負担する仕組みです。この制度の導入により、薬剤師には以下の業務が新たに発生しました。
特定薬剤管理指導加算3ロは、この選定療養制度に関連する説明・指導を評価するための加算として新設されました。患者への丁寧な説明が求められることから、2025年4月からは点数が倍増することになったのです。
選定療養制度の対象となる医薬品は、後発医薬品が存在する先発医薬品(長期収載品)です。ただし、全ての長期収載品が対象となるわけではなく、一部の薬剤は除外されています。
実際の薬局業務において、特定薬剤管理指導加算3ロをどのように算定するか、具体的な例を見てみましょう。
例1:選定療養に関する説明
A患者さんが処方箋を持って来局。処方箋には「リピトール10mg 1錠 1日1回夕食後」と記載されています。リピトールは後発医薬品が存在する先発医薬品であるため、選定療養の対象となります。
例2:供給不安定による銘柄変更
B患者さんが処方箋を持って来局。前回はメーカーXのロサルタン錠を調剤しましたが、今回はメーカーXの製品が入手困難な状況です。
このように、患者さんへの丁寧な説明と適切な記録を行うことで、特定薬剤管理指導加算3ロを算定することができます。
特定薬剤管理指導加算3には「イ」と「ロ」の2区分がありますが、それぞれの違いと併算定のポイントについて整理しましょう。
特定薬剤管理指導加算3イ
特定薬剤管理指導加算3ロ
併算定のポイント
例えば、新たに処方されたRMP策定品目の医薬品について、RMP資材を用いた説明(イ)と選定療養に関する説明(ロ)の両方を行った場合、「イ」と「ロ」の両方を算定することができます。
また、特定薬剤管理指導加算1(ハイリスク薬)や特定薬剤管理指導加算2(吸入薬)と特定薬剤管理指導加算3は、要件を満たせば同時に算定することができます。
特定薬剤管理指導加算3の「イ」と「ロ」の違いを理解し、適切に算定することで、薬局の収益向上につながるだけでなく、患者さんへのより丁寧な服薬指導にもつながります。
以上、特定薬剤管理指導加算3ロの算定要件や注意点、2025年4月からの点数改定について解説しました。薬局業務において適切に活用し、患者さんへの服薬指導の質の向上と薬局経営の安定化につなげていただければ幸いです。
実際の運用にあたっては、最新の情報を確認するとともに、不明点があれば地域の審査支払機関に確認することをお勧めします。特に2025年4月の点数改定に向けて、準備を進めておくことが重要です。