特定薬剤管理指導加算3ロの算定と選定療養の点数改定

特定薬剤管理指導加算3ロの算定と選定療養の点数改定

特定薬剤管理指導加算3ロの算定について

特定薬剤管理指導加算3ロの概要
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算定点数

2024年6月?2025年3月:5点、2025年4月以降:10点

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対象となる場面

選定療養の説明、供給不安定による銘柄変更時の説明

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算定回数

患者1人につき、該当医薬品が最初に処方された1回限り

2024年度の診療報酬改定において新設された「特定薬剤管理指導加算3」は、薬剤師による丁寧な服薬指導を評価するための加算です。この加算は「イ」と「ロ」の2区分に分かれており、それぞれ異なる状況で算定することができます。本記事では特に「特定薬剤管理指導加算3ロ」に焦点を当て、その算定要件や注意点、2025年4月からの点数改定について詳しく解説します。

 

特定薬剤管理指導加算3ロの算定要件と対象薬剤

特定薬剤管理指導加算3ロは、以下の2つのケースで算定することができます。

 

  1. 選定療養に関する説明を行った場合
    • 後発医薬品が存在する先発医薬品について、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者に対して説明を行った場合
    • 重要なポイントとして、説明の結果、患者が先発医薬品・後発医薬品のどちらを選択しても算定可能です
  2. 医薬品供給不安定による銘柄変更の説明を行った場合
    • 前回調剤された銘柄の必要数量が確保できず、別の銘柄に変更して調剤する必要がある患者に対して説明を行った場合
    • この場合、薬品名・剤形・規格・メーカー名のいずれかが変更されていれば算定可能です

いずれの場合も、患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定することができます。つまり、同じ薬剤について2回目以降は算定できないということです。

 

特定薬剤管理指導加算3ロの点数と2025年4月からの改定

特定薬剤管理指導加算3ロの点数は、2024年6月の新設時点では5点でした。しかし、2025年4月1日からは点数が引き上げられ、10点となります。

 

この点数引き上げの背景には、2024年10月1日から長期収載品の選定療養が施行され、患者への説明など保険薬局の業務負担が増加していることが挙げられます。厚生労働省は、この業務負担の増加を踏まえ、評価の見直しを行ったのです。

 

点数改定のポイント。

  • 現行(2024年6月?2025年3月):5点
  • 改定後(2025年4月1日?):10点(+5点)

この改定は服薬管理指導料の加算だけでなく、かかりつけ薬剤師指導料における同加算についても同様の見直しが行われます。

 

特定薬剤管理指導加算3ロの算定における注意点と記録方法

特定薬剤管理指導加算3ロを算定する際には、以下の点に注意する必要があります。

 

  1. 薬剤服用歴等への記録
    • 対象となる医薬品が分かるように記載する
    • 指導内容の要点を記載する
  2. レセプトへの記載
    • 「ロ(銘柄変更)」の場合、必要数量を確保できなかった薬剤名をレセプトに記載する必要があります
  3. 同時算定に関する注意点
    • 特定薬剤管理指導加算3の「イ」と「ロ」は同時算定が可能です
    • 1回の処方で「イ」に該当する薬剤と「ロ」に該当する薬剤が同時に処方されている場合、両方の要件を満たしていればそれぞれ算定可能です
    • 特定薬剤管理指導加算1および2と特定薬剤管理指導加算3は同時算定が可能です
  4. 算定タイミング
    • 「最初に処方された1回に限り」という条件は、その薬剤について初めて説明・指導を行った場合に算定できるという意味です
    • 同一の薬剤について再度処方された場合は算定できません

特定薬剤管理指導加算3ロと選定療養制度の関連性

特定薬剤管理指導加算3ロの算定要件の一つである「選定療養」について理解を深めましょう。

 

選定療養制度とは、2024年10月1日から施行された制度で、後発医薬品が存在する先発医薬品(長期収載品)を患者が希望して使用する場合に、その差額を患者が負担する仕組みです。この制度の導入により、薬剤師には以下の業務が新たに発生しました。

 

  1. 患者に対する選定療養制度の説明
  2. 先発医薬品と後発医薬品の価格差の説明
  3. 患者の選択に基づく調剤と記録

特定薬剤管理指導加算3ロは、この選定療養制度に関連する説明・指導を評価するための加算として新設されました。患者への丁寧な説明が求められることから、2025年4月からは点数が倍増することになったのです。

 

選定療養制度の対象となる医薬品は、後発医薬品が存在する先発医薬品(長期収載品)です。ただし、全ての長期収載品が対象となるわけではなく、一部の薬剤は除外されています。

 

特定薬剤管理指導加算3ロの算定例と実務への応用

実際の薬局業務において、特定薬剤管理指導加算3ロをどのように算定するか、具体的な例を見てみましょう。

 

例1:選定療養に関する説明
A患者さんが処方箋を持って来局。処方箋には「リピトール10mg 1錠 1日1回夕食後」と記載されています。リピトールは後発医薬品が存在する先発医薬品であるため、選定療養の対象となります。

 

  1. 患者さんに選定療養制度について説明
  2. 先発医薬品(リピトール)と後発医薬品(アトルバスタチン錠)の価格差を説明
  3. 患者さんの選択を確認(この例では先発医薬品を希望したと仮定)
  4. 調剤と服薬指導を実施
  5. 薬剤服用歴に指導内容を記録
  6. 特定薬剤管理指導加算3ロ(5点)を算定

例2:供給不安定による銘柄変更
B患者さんが処方箋を持って来局。前回はメーカーXのロサルタン錠を調剤しましたが、今回はメーカーXの製品が入手困難な状況です。

 

  1. 患者さんに供給不安定の状況を説明
  2. メーカーYのロサルタン錠に変更する旨を説明
  3. 調剤と服薬指導を実施
  4. 薬剤服用歴に指導内容と銘柄変更の理由を記録
  5. レセプトに確保できなかった薬剤名(メーカーXのロサルタン錠)を記載
  6. 特定薬剤管理指導加算3ロ(5点)を算定

このように、患者さんへの丁寧な説明と適切な記録を行うことで、特定薬剤管理指導加算3ロを算定することができます。

 

特定薬剤管理指導加算3ロとイの違いと併算定のポイント

特定薬剤管理指導加算3には「イ」と「ロ」の2区分がありますが、それぞれの違いと併算定のポイントについて整理しましょう。

 

特定薬剤管理指導加算3イ

  • 算定要件:患者向けRMP資材を用いた安全性に関する説明・指導
  • 対象:RMP(医薬品リスク管理計画)が策定されている医薬品や、緊急安全性情報(イエローレター)、安全性速報(ブルーレター)が発出された医薬品
  • 点数:5点(2025年4月以降も変更なし)

特定薬剤管理指導加算3ロ

  • 算定要件:選定療養の説明または供給不安定による銘柄変更の説明
  • 対象:選定療養の対象となる先発医薬品、供給不安定により銘柄変更が必要な医薬品
  • 点数:5点(2025年4月以降は10点)

併算定のポイント

  1. 1回の処方で「イ」と「ロ」の両方の要件を満たす場合、両方を算定可能
  2. 1つの医薬品が「イ」と「ロ」の両方に該当する場合も、それぞれの観点で必要な説明をしていれば両方を算定可能
  3. 特定薬剤管理指導加算1、2と特定薬剤管理指導加算3(イ・ロ)は同時算定可能

例えば、新たに処方されたRMP策定品目の医薬品について、RMP資材を用いた説明(イ)と選定療養に関する説明(ロ)の両方を行った場合、「イ」と「ロ」の両方を算定することができます。

 

また、特定薬剤管理指導加算1(ハイリスク薬)や特定薬剤管理指導加算2(吸入薬)と特定薬剤管理指導加算3は、要件を満たせば同時に算定することができます。

 

特定薬剤管理指導加算3の「イ」と「ロ」の違いを理解し、適切に算定することで、薬局の収益向上につながるだけでなく、患者さんへのより丁寧な服薬指導にもつながります。

 

以上、特定薬剤管理指導加算3ロの算定要件や注意点、2025年4月からの点数改定について解説しました。薬局業務において適切に活用し、患者さんへの服薬指導の質の向上と薬局経営の安定化につなげていただければ幸いです。

 

実際の運用にあたっては、最新の情報を確認するとともに、不明点があれば地域の審査支払機関に確認することをお勧めします。特に2025年4月の点数改定に向けて、準備を進めておくことが重要です。