整腸剤一覧と種類の特徴や効能の使い分け

整腸剤一覧と種類の特徴や効能の使い分け

整腸剤一覧と種類

整腸剤の基本情報
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整腸剤とは

腸内細菌叢のバランスを整え、便秘や下痢などの症状を改善する医薬品です。

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主な成分

ビフィズス菌、乳酸菌(ラクトミン)、酪酸菌など様々な善玉菌が使用されています。

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医薬品区分

第3類医薬品や指定医薬部外品として販売されており、薬局やドラッグストアで購入できます。

整腸剤は腸内環境を整えるために使用される医薬品です。腸内には数百種類、600兆個以上もの細菌が生息しており、これらは「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」または「腸内フローラ」と呼ばれています。この腸内細菌のバランスが崩れると、下痢や便秘、腹部膨満感などの症状が現れることがあります。整腸剤はこれらの症状を改善するために処方されます。

 

整腸剤には様々な種類があり、それぞれ特徴や効能が異なります。ここでは、主な整腸剤の種類と特徴について詳しく解説していきます。

 

整腸剤の種類とビフィズス菌製剤の特徴

ビフィズス菌製剤は、整腸剤の中でも最もポピュラーな種類の一つです。代表的な製品には以下のようなものがあります。

  1. ビオフェルミン錠・ビオフェルミン散
    • 成分:ビフィズス菌末 12mg/錠または1g中
    • 特徴:善玉菌の代表であるビフィズス菌を補給し、腸内環境を整える
    • 効果:特に下痢に高い効果を示す
  2. ラックビー錠・ラックビー微粒N
    • 成分:ビフィズス菌末 10mg/錠または1g中
    • 特徴:生きたビフィズス菌が腸まで届き、特に便秘に効果的
    • 使用感:微粒タイプは飲みやすい
  3. ビフィスゲン散
    • 成分:ビフィズス菌末 20mg/1g中
    • 特徴:ビフィズス菌の含有量が多い

これらのビフィズス菌製剤は、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑制することで腸内環境を改善します。特に、腸内のビフィズス菌が減少している高齢者や、抗生物質の服用により腸内細菌のバランスが崩れた方に効果的です。

 

整腸剤一覧における乳酸菌製剤と複合菌製剤

乳酸菌(ラクトミン)製剤と複数の菌を組み合わせた複合菌製剤も、整腸剤として広く使用されています。

 

【乳酸菌(ラクトミン)製剤】

  • アタバニン散:ラクトミン 50mg/1g中
  • フソウラクトミン末:ラクトミン 3.5mg/1g中
  • ラクトミン末「マルイシ」:1g中に生菌が1〜10億個含有

【複合菌製剤】

  • ビオスミン配合散
    • 成分:ビフィズス菌 4mg + ラクトミン 2mg/1g中
    • 特徴:2種類の善玉菌の相乗効果が期待できる
  • ビオスリー配合錠・配合散・配合OD錠
    • 成分:ラクトミン(乳酸菌)+ 酪酸菌 + 糖化菌
    • 特徴:3種類の菌が腸内環境を多角的に整える
    • 効果:腸内細菌のバランスを総合的に改善
  • ビオフェルミン配合散
    • 成分:ラクトミン 6mg + 糖化菌 4mg/1g中
    • 特徴:乳酸菌と糖化菌の組み合わせで腸内環境を整える

    複合菌製剤は、複数の菌の相乗効果により、単一の菌製剤よりも幅広い効果が期待できる場合があります。特に、腸内環境が複雑に乱れている場合に有効です。

     

    整腸剤における耐性乳酸菌と宮入菌製剤

    抗生物質と併用する場合に特に重要なのが、耐性乳酸菌製剤と宮入菌(酪酸菌)製剤です。これらは抗生物質の影響を受けにくく、抗生物質治療中でも腸内環境を維持するのに役立ちます。

     

    【耐性乳酸菌製剤】

    • ビオフェルミンR錠・R散
      • 成分:耐性乳酸菌 6mg/錠または1g中
      • 特徴:抗生物質に耐性があり、抗生物質治療中でも効果を発揮
    • ラックビーR散
      • 成分:耐性乳酸菌 10mg/1g中
      • 特徴:抗生物質との併用に適している
    • エンテロノンR散
      • 成分:耐性乳酸菌 100mg/1g中
      • 特徴:高濃度の耐性乳酸菌を含有

      【宮入菌(酪酸菌)製剤】

      • ミヤBM錠・細粒
        • 成分:宮入菌末 20mg/錠、40mg/1g中
        • 特徴:胃酸に強く、生きたまま腸に届く
        • 効果:特に下痢や過敏性腸症候群に効果的
        • 特記事項:「ビオチン療法」として皮膚病の治療にも使用される

        これらの製剤は、抗生物質による腸内細菌叢の乱れ(抗生物質関連下痢症)を予防・改善するために処方されることが多いです。特に、長期間の抗生物質治療を受ける患者さんには重要な薬剤となります。

         

        整腸剤一覧から見る効能と使い分け方

        整腸剤は症状や目的によって適切に使い分けることが重要です。ここでは、主な症状別の整腸剤の選び方について解説します。

         

        【下痢に効果的な整腸剤】

        • ビオフェルミン製剤:下痢に特に高い効果を示す
        • ミヤBM:下痢や過敏性腸症候群に効果的

        【便秘に効果的な整腸剤】

        • ラックビー:便秘改善に特化した整腸剤
        • ビオスリー:腸の動きを活性化し、便秘改善に寄与

        【腹部膨満感・ガスに効果的な整腸剤】

        • ガスピタンa(小林製薬):腸内ガスの発生を抑制
        • ザ・ガードコーワ整腸錠α3+:腸内環境を整えつつ、ガス溜まりを改善

        【抗生物質と併用する場合】

        • ビオフェルミンR:抗生物質に耐性がある
        • ミヤBM:抗生物質の影響を受けにくい
        • ビオスリー:抗生物質との併用が可能

        整腸剤の選択は症状の種類や重症度、他の薬剤との相互作用などを考慮して行うべきです。特に処方薬の場合は、医師や薬剤師の指導のもとで適切な製剤を選択することが重要です。

         

        整腸剤の効果的な使用方法と腸内フローラへの影響

        整腸剤を最大限に活用するためには、適切な使用方法を知ることが重要です。また、整腸剤が腸内フローラにどのような影響を与えるのかを理解することも大切です。

         

        【整腸剤の効果的な使用方法】

        1. 服用タイミング
          • 基本的には食後に服用するのが効果的
          • ビフィズス菌製剤は食間(食事と食事の間)に服用すると胃酸の影響を受けにくい場合も
        2. 継続的な服用
          • 整腸剤は一時的に服用しても効果が限定的
          • 1〜2週間程度の継続服用で効果が現れることが多い
          • 腸内環境の改善には1〜3ヶ月の継続服用が理想的
        3. 他の薬剤との併用
          • 抗生物質と併用する場合は、抗生物質服用の2時間以上前後に服用するのが理想的
          • 耐性乳酸菌製剤やミヤBMは抗生物質と同時に服用しても効果あり

        【腸内フローラへの影響】
        整腸剤は腸内フローラに以下のような好影響を与えます。

        1. 善玉菌の増加
          • ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が増加
          • 短鎖脂肪酸(酪酸など)の産生が促進され、腸内環境が改善
        2. 悪玉菌の抑制
          • 善玉菌の増加により、悪玉菌(ウェルシュ菌など)の増殖が抑制される
          • 腸内pHが酸性に傾き、病原菌の増殖が抑えられる
        3. 腸管免疫の活性化
          • 腸内細菌叢の改善により、腸管免疫系が活性化
          • 全身の免疫機能向上にも寄与する可能性
        4. 腸管バリア機能の強化
          • 腸内環境の改善により、腸管バリア機能が強化
          • 有害物質の吸収が抑制され、アレルギーや炎症性疾患のリスク低減に寄与

        整腸剤の効果を最大化するためには、バランスの良い食事(食物繊維の摂取など)や適度な運動、十分な水分摂取など、生活習慣の改善も併せて行うことが重要です。

         

        整腸剤一覧における市販薬と処方薬の違いと選び方

        整腸剤には市販薬(OTC医薬品)と処方薬があり、それぞれ特徴や入手方法が異なります。ここでは、両者の違いと適切な選び方について解説します。

         

        【市販薬(OTC医薬品)の整腸剤】

        1. 特徴
          • 薬局やドラッグストア、一部コンビニでも購入可能
          • 第3類医薬品や指定医薬部外品として販売
          • 比較的軽度の症状に対応
        2. 主な製品例
          • 新ビオフェルミンS錠(大正製薬):指定医薬部外品
          • ビオスリーHi錠(アリナミン製薬):指定医薬部外品
          • ガスピタンa(小林製薬):第3類医薬品
          • ビオフェルミンぽっこり整腸チュアブル(大正製薬):第3類医薬品
        3. 選び方のポイント
          • 症状に合わせて選択(下痢、便秘、腹部膨満感など)
          • 服用のしやすさ(錠剤、散剤、チュアブルなど)
          • 価格や使用期間を考慮

        【処方薬の整腸剤】

        1. 特徴
          • 医師の処方箋が必要
          • 医療用医薬品として分類
          • 比較的重度の症状や特定の疾患に対応
          • 保険適用で購入可能
        2. 主な製品例
          • ビオフェルミン錠剤(ビオフェルミン製薬)
          • ミヤBM錠・細粒
          • ビオスリー配合錠・配合散
          • ビオフェルミンR錠・R散
        3. 処方される主な状況
          • 抗生物質治療に伴う腸内細菌叢の乱れ
          • 過敏性腸症候群(IBS)
          • 炎症性腸疾患の補助療法
          • 慢性的な便通異常

        【選び方のガイドライン】

        • 軽度の症状:市販の整腸剤から症状に合ったものを選択
        • 症状が改善しない場合:医療機関を受診し、処方薬の検討
        • 他の薬剤を服用中:相互作用を考慮し、薬剤師や医師に相談
        • 特定の疾患がある場合:医師の指導のもとで適切な整腸剤を選択

        市販薬と処方薬はそれぞれ特性が異なるため、症状の程度や目的に応じて適切に選択することが重要です。特に、症状が長期間続く場合や、重度の場合は医療機関を受診することをお勧めします。

         

        整腸剤の選択に迷った場合は、薬剤師に相談するのが最も確実な方法です。薬剤師は個々の症状や状況に合わせた適切なアドバイスを提供してくれます。

         

        以上、整腸剤の一覧と種類、効能、使い分け方について詳しく解説しました。腸内環境を整えることは全身の健康にも関わる重要な要素です。自分の症状や目的に合った整腸剤を選び、健康的な腸内環境を維持しましょう。