
薬剤性過敏症候群(DIHS: Drug-induced hypersensitivity syndrome)は、重篤な薬疹の一種です。その特徴的な症状には、以下のようなものがあります。
これらの症状は、原因薬剤の投与開始から通常2週間以上経過してから出現することが多く、薬剤中止後も症状が遷延するのが特徴です。
DIHSでは、皮膚症状だけでなく、様々な臓器障害を伴うことがあります。
これらの臓器障害は、症例によって様々な程度で出現し、時に致命的となることもあります。
DIHSの診断には、以下の診断基準が用いられます(日本皮膚科学会の診断基準2005年版)。
典型DIHSは上記7項目全てを満たし、非典型DIHSは1-5を満たす場合とされています。
鑑別疾患としては以下のようなものがあります。
これらの疾患との鑑別には、詳細な病歴聴取、皮膚所見の観察、血液検査、皮膚生検などが重要となります。
DIHSの原因となる薬剤は比較的限られており、主に以下のようなものが知られています。
これらの薬剤に対する免疫反応が、DIHSの発症に関与していると考えられています。特に、特定のHLA(ヒト白血球抗原)タイプとの関連が指摘されており、例えば日本人ではHLA-A*31:01とカルバマゼピンによるDIHSの関連が報告されています。
発症メカニズムについては、以下のような仮説が提唱されています。
これらの要因が複雑に絡み合い、DIHSの多彩な症状を引き起こすと考えられています。
DIHSの治療の基本は以下の通りです。
ステロイドの減量は慎重に行う必要があり、急激な減量はHHV-6の再活性化や症状の再燃を引き起こす可能性があります。
薬剤師の役割としては、以下のような点が重要です。
特に、DIHSの原因薬剤は比較的限られているため、薬歴管理と処方監査の際に注意深くチェックすることが重要です。また、DIHSの既往がある患者に対しては、交差反応性のある薬剤の使用を避けるなど、適切な薬剤選択のサポートが求められます。
薬剤性過敏症候群は、その重篤性と多彩な症状から、早期発見と適切な対応が極めて重要です。薬剤師は、その専門性を活かし、医療チームの一員として患者の安全な薬物療法に貢献することが期待されています。
薬剤性過敏症症候群(DIHS)の最新の知見についての詳細な解説
薬剤性過敏症症候群に関する患者向け情報(PMDA)
以上、薬剤性過敏症候群の症状、診断基準、原因薬剤、治療法について詳しく解説しました。薬剤師として、この重篤な副作用に対する理解を深め、適切な対応ができるよう、常に最新の情報をアップデートしていくことが重要です。また、医療チームの中で薬剤の専門家としての役割を果たし、患者さんの安全な薬物療法に貢献していくことが求められています。
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