薬学管理料の種類と算定要件の点数一覧

薬学管理料の種類と算定要件の点数一覧

薬学管理料の種類と算定要件

薬学管理料の基本情報
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全15種類の薬学管理料

薬学管理料は全部で15項目あり、患者の服薬指導や管理に関する評価として設定されています。

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対人業務の重要性

近年は薬剤師の対人業務の重要性が高く評価され、薬学管理料の点数が上昇傾向にあります。

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薬局経営への影響

薬学管理料を適切に算定することで、薬局の収益向上につながります。

薬学管理料は、薬剤師が行う服薬指導や薬学的管理に対して評価される報酬です。2024年現在、薬学管理料は全15項目あり、それぞれ算定要件や点数が異なります。薬局経営において、これらの管理料を適切に算定することは収益向上に直結する重要な要素となっています。

 

特に近年の調剤報酬改定では、薬剤師の「対物業務」から「対人業務」へのシフトが進み、薬学管理料の重要性が高まっています。患者一人ひとりに合わせた丁寧な服薬指導や管理が求められる中、薬学管理料の種類と算定要件を正確に理解することが必要です。

 

薬学管理料の15種類と基本点数

薬学管理料は以下の15種類に分類されます。それぞれの基本点数と概要を見ていきましょう。

 

  1. 調剤管理料:処方箋受付1回につき、薬学的分析・評価を行った場合に算定。内服薬の場合は処方日数に応じて点数が変動します。

     

    • 7日分以下:4点
    • 8〜14日分:28点
    • 15〜28日分:50点
    • 29日分以上:60点
    • 内服薬以外の場合:4点
  2. 服薬管理指導料:患者に対して服薬指導を行った場合に算定。お薬手帳の有無や来局期間によって点数が異なります。

     

    • 3月以内再来局・手帳あり:43点
    • 3月以内再来局・手帳なし/3月以上:57点
    • 特養入所者:43点
    • オンライン服薬指導:43点(月1回)
  3. かかりつけ薬剤師指導料:かかりつけ薬剤師が患者の服薬指導を行った場合に算定。76点。

     

  4. かかりつけ薬剤師包括管理料:かかりつけ薬剤師が包括的な薬学管理を行った場合に算定。291点。

     

  5. 外来服薬支援料:処方された薬剤について、患者の服薬管理を支援した場合に算定。

     

  6. 服用薬剤調整支援料:ポリファーマシー対策として、多剤服用の患者に対して薬剤調整の支援を行った場合に算定。

     

    • 服用薬剤調整支援料1:125点
    • 服用薬剤調整支援料2:100点(3ヶ月に1回)
  7. 調剤後薬剤管理指導料:調剤後も継続的に患者の状態を把握し、必要な指導を行った場合に算定。30点(月1回)。

     

  8. 服薬情報等提供料:患者の服薬情報を医療機関等に提供した場合に算定。

     

  9. 在宅患者訪問薬剤管理指導料:在宅患者を訪問して薬学的管理指導を行った場合に算定。

     

  10. 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料:在宅患者の状態の急変等に伴い、緊急に訪問して必要な薬学的管理指導を行った場合に算定。

     

    • 在宅緊急訪問薬剤管理指導料1:500点
    • 在宅緊急訪問薬剤管理指導料2:200点
  11. 在宅患者緊急時等共同指導料:在宅患者の状態の急変等に伴い、医師の求めにより、共同で必要な指導を行った場合に算定。

     

  12. 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:在宅患者の重複投薬・相互作用を防止するための管理を行った場合に算定。

     

  13. 経管投薬支援料:経管投薬が行われている患者に対して必要な支援を行った場合に算定。100点(初回のみ)。

     

  14. 在宅移行初期管理料:在宅医療に移行する患者に対して初期の管理を行った場合に算定。

     

  15. 退院時共同指導料:患者の退院に際して、医療機関の医師や看護師等と共同で指導を行った場合に算定。

     

薬学管理料の算定要件と注意点

薬学管理料を算定するには、それぞれの項目に定められた要件を満たす必要があります。主な算定要件と注意点を解説します。

 

調剤管理料の算定要件

  • 処方箋受付1回につき、処方内容についての薬学的分析と評価を行うこと
  • 薬剤服用歴の記録・管理を行うこと
  • 内服薬(滴剤、浸煎薬、湯薬、屯服薬を除く)を調剤した場合は、1剤につき日数に応じた点数を算定(3剤まで)

服薬管理指導料の算定要件

  • 患者の同意を得て、残薬に関する情報をお薬手帳に記載し、処方医に情報提供すること
  • 患者自身に普段利用する薬局名を記載するよう促すこと
  • 手帳持参を促進するための取り組みを行うこと

かかりつけ薬剤師指導料・同包括管理料の算定要件

  • パーテーション等で区切られた独立したカウンターを有すること(プライバシー保護)
  • 患者の同意を得ていること
  • 薬剤師が勤務時間の半分以上当該薬局に勤務していること
  • 薬剤師としての経験が3年以上あること
  • 当該薬局に1年以上勤務していること

服用薬剤調整支援料の算定要件

  • 服用薬剤調整支援料1:6種類以上の内服薬が処方されている患者に対して、医師に減薬を提案した場合
  • 服用薬剤調整支援料2:複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者に対して、重複投薬の調整を提案した場合

算定にあたっては、これらの要件を満たしていることを確認し、適切に記録を残すことが重要です。また、患者の同意が必要な項目もあるため、丁寧な説明と同意取得のプロセスも欠かせません。

 

薬学管理料の加算と特定疾患への対応

薬学管理料には基本点数に加えて、特定の疾患や状況に応じた加算があります。これらの加算を適切に算定することで、より質の高い薬学的管理・指導に対する評価を受けることができます。

 

特定薬剤管理指導加算

  • 特定薬剤管理指導加算1:ハイリスク薬に相当する疾患の患者に対する指導(10点)
  • 特定薬剤管理指導加算2:がん患者に対して、レジメン等を把握した上で必要な服薬指導を行い、次回診療時までの患者の状態を把握し、医療機関に情報提供した場合(100点、月1回)

吸入薬指導加算

  • 喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に対して、吸入薬の使用方法を文書と練習吸入器を使って実技指導を行い、その内容を医療機関に提供した場合(30点、3ヶ月に1回まで)

調剤後薬剤管理指導加算

  • 地域支援体制加算を算定している薬局が、インスリン製剤またはスルホニルウレア剤を使用している糖尿病患者に対し、調剤後も患者の状況を把握し、必要な指導を行い、文書等で医療機関に提供した場合(30点、月1回)

これらの加算は、患者の疾患特性に合わせた専門的な指導や、調剤後のフォローアップ、医療機関との連携強化といった、より高度な薬学的管理・指導に対する評価として設けられています。

 

特に近年は、がん患者や糖尿病患者、呼吸器疾患患者など、専門的な知識が求められる疾患に対する薬剤師の関わりが重視されています。これらの患者に対して適切な指導を行い、医療機関と連携することで、患者のQOL向上と医療の質向上に貢献することができます。

 

薬学管理料と在宅医療への取り組み

在宅医療の推進に伴い、薬剤師の在宅での薬学的管理・指導の重要性も高まっています。薬学管理料には在宅医療に関連する項目が複数あり、これらを適切に活用することで、在宅患者への質の高いケアを提供することができます。

 

在宅患者訪問薬剤管理指導料

  • 在宅患者を訪問して薬学的管理指導を行った場合に算定
  • 単一建物診療患者数によって点数が異なる
  • 在宅患者オンライン服薬指導料(57点、月1回)も新設

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

  • 在宅患者の状態の急変等に伴い、緊急に訪問して必要な薬学的管理指導を行った場合に算定
  • 在宅緊急訪問薬剤管理指導料1:500点
  • 在宅緊急訪問薬剤管理指導料2:200点

経管投薬支援料

  • 経管投薬が行われている患者が簡易縣濁法を開始する場合に、必要な支援を行った場合に算定
  • 100点(初回のみ)

在宅医療における薬剤師の役割は、単に薬を届けるだけではなく、患者の生活環境や身体状況に合わせた薬学的管理・指導を行うことです。例えば、飲み込みが困難な患者に対する剤形の工夫や、複数の医療機関から処方された薬剤の一元的な管理、副作用のモニタリングなどが求められます。

 

また、2020年度の調剤報酬改定では、オンライン服薬指導が解禁され、在宅患者に対するオンライン服薬指導料も新設されました。これにより、対面での訪問が難しい場合でも、ICTを活用した服薬指導が可能になりました。

 

在宅医療に関連する薬学管理料を適切に算定することで、薬局の収益向上につながるだけでなく、地域包括ケアシステムの一員として、薬剤師が在宅医療に積極的に関わるきっかけにもなります。

 

薬学管理料の算定漏れを防ぐポイント

薬学管理料は、要件を満たしていても算定していなければ請求できません。算定漏れを防ぎ、適切に薬学管理料を請求するためのポイントを解説します。

 

1. 算定要件の正確な理解

  • 各薬学管理料の算定要件を正確に理解し、スタッフ間で共有する
  • 調剤報酬改定の内容をタイムリーに把握し、新設された項目や変更点を確認する
  • 疑問点があれば、地域の薬剤師会や保険薬局協会に確認する

2. 記録の徹底

  • 服薬指導の内容や患者の状態、医療機関への情報提供など、算定の根拠となる記録を徹底する
  • 電子薬歴システムを活用し、算定要件を満たしているかチェックできる仕組みを作る
  • 特に加算項目については、算定条件を満たしていることを明確に記録する

3. 業務フローの整備

  • 薬学管理料の算定漏れを防ぐための業務フローを整備する
  • 処方箋受付時、調剤時、服薬指導時など、各段階でのチェックポイントを設ける
  • 算定可能な項目をリスト化し、日常業務の中で確認できるようにする

4. スタッフ教育の実施

  • 薬剤師だけでなく、受付スタッフも含めた全員が薬学管理料の概要を理解できるよう教育する
  • 定期的な勉強会や症例検討会を開催し、適切な算定について議論する
  • 算定漏れが多い項目については、特に重点的に教育を行う

5. システムの活用

  • 調剤支援システムや電子薬歴システムを活用し、算定可能な項目を自動的に提案する機能を利用する
  • レセプトチェックソフトを導入し、算定漏れや算定誤りを防止する
  • 定期的にレセプト分析を行い、算定状況を把握する

薬学管理料の算定漏れは、薬局の収益に直接影響するだけでなく、薬剤師の専門性や対人業務の価値が適切に評価されないことにもつながります。日々の業務の中で、これらのポイントを意識し、適切な算定を心がけましょう。

 

また、算定のためだけの形式的な対応ではなく、患者のためになる質の高い薬学的管理・指導を行うことが最も重要です。算定要件を満たすことと、患者のQOL向上や医療の質向上に貢献することは、本来一致するものであるべきです。

 

薬学管理料の今後の展望と薬剤師の役割

近年の調剤報酬改定の傾向を見ると、薬剤師の「対物業務」から「対人業務」へのシフトが明確になっており、薬学管理料の重要性は今後さらに高まると予想されます。薬学管理料の今後の展望と、これからの薬剤師に求められる役割について考察します。

 

1. 専門性の高い薬学的管理への評価強化

  • がん患者、糖尿病