かかりつけ薬剤師指導料の概要と算定要件
かかりつけ薬剤師指導料の基本情報
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算定の目的
患者の服薬状況を一元的・継続的に把握し、適切な服薬指導を行うため
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2024年度の主な改定点
24時間対応の要件見直し、連携薬剤師の複数人対応が可能に
かかりつけ薬剤師指導料は、患者が選択した保険薬剤師(かかりつけ薬剤師)が、医師と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握した上で服薬指導等を行った場合に算定できる薬学管理料です。処方箋受付1回につき76点が算定できます。
この制度は2016年度の調剤報酬改定で新設され、患者がかかりつけ薬剤師を持つことで、複数の医療機関から処方された薬の重複や相互作用を防ぎ、安全な薬物療法を実現することを目的としています。
かかりつけ薬剤師指導料を算定するためには、施設基準を満たした保険薬局において、要件を満たした保険薬剤師が患者の同意を得て必要な指導等を行う必要があります。また、この指導料の算定は地域支援体制加算を取得するための施設基準としても必須となっており、より充実した薬局機能を果たす上で重要な役割を担っています。
かかりつけ薬剤師指導料の施設基準と届出方法
かかりつけ薬剤師指導料を算定するには、まず薬局としての施設基準を満たし、地方厚生局長等に届け出る必要があります。施設基準の主な要件は以下の通りです。
- 薬剤師の勤務経験に関する要件
- 保険薬剤師として3年以上の保険薬局勤務経験がある(病院薬剤師としての勤務経験が1年以上ある場合、1年を上限として含めることが可能)
- 当該保険薬局に週32時間以上勤務している(育児・介護等で時短勤務を行う薬剤師の場合は、週24時間以上かつ週4日以上勤務)
- 当該保険薬局に継続して1年以上在籍している
- 認定・研修に関する要件
- 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得している
- 地域活動への参画
- 患者のプライバシーへの配慮
- パーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮している
施設基準の届出は、「特掲診療料の施設基準に係る届出書」(別添2)と「かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準に係る届出書添付書類」(様式90)を用いて行います。
地域活動の取組については、疑義解釈によると以下のような活動が該当します。
- 地域ケア会議など多職種が連携する医療・介護に関する会議への参加
- 地域の行政機関や医師会等が主催する住民向け研修会への参加
- 薬と健康の週間、薬物乱用防止活動などの地域活動
- 休日夜間薬局としての対応
- 学校薬剤師の業務
かかりつけ薬剤師指導料の患者同意取得と算定手順
かかりつけ薬剤師指導料を算定するためには、患者の同意を得ることが必須条件です。同意取得の手順と注意点は以下の通りです。
- 同意取得の対象
- 当該保険薬局に複数回来局している患者に対して行います
- 患者本人の同意取得が困難な場合は、介護を行っている家族等の同意でも可能です
- 同意取得の方法
- かかりつけ薬剤師本人が以下の事項を説明します。
- かかりつけ薬剤師の業務内容
- かかりつけ薬剤師を持つことの意義、役割等
- かかりつけ薬剤師指導料の費用
- 当該患者がかかりつけ薬剤師を必要とすると判断した理由
- 別紙様式2を参考に作成した同意書に署名の記載を求めます
- 同意書は薬局で保管し、薬剤服用歴の記録にその旨を記載します
- 算定のタイミング
- 同意を得た後、次回の処方箋受付時以降に算定できます
- 同一月内は同一の保険薬剤師について算定します
- お薬手帳への記載
- 他の薬局や医療機関でもかかりつけ薬剤師の情報を確認できるよう、お薬手帳にかかりつけ薬剤師の氏名、勤務先の保険薬局の名称及び連絡先を記載します
- 連携する他の薬剤師の対応
- かかりつけ薬剤師がやむを得ない事情により業務を行えない場合に備え、連携する他の保険薬剤師が服薬指導等を行うことについても、あらかじめ患者の同意を得ておくことが望ましいです
同意書には、かかりつけ薬剤師に希望する事項と患者の署名を記載してもらいます。施設の入所者等に対する同意取得については、患者ごとの状況に応じて個別に判断する必要があり、施設単位でまとめて同意取得することは認められていません。
かかりつけ薬剤師の服薬指導と24時間対応体制
かかりつけ薬剤師は、患者に対して以下のような服薬指導等を行う必要があります。
- 一元的な服薬情報の管理
- 患者が受診している全ての医療機関の情報を把握
- 処方薬だけでなく、OTC医薬品や健康食品等についても全て把握し、薬歴に記載
- 患者が他の薬局で調剤を受けた場合も、その服用薬の情報を入手し記録
- 継続的な服薬状況の把握と指導
- 調剤後も患者の服薬状況を定期的に把握(電話連絡、訪問、来局時など)
- 把握した情報を処方医に提供し、必要に応じて処方提案
- 服用中の薬剤に関する重要情報を患者に提供
- ブラウンバッグ運動の推進
- 服用中の薬剤等を保険薬局に持参するよう動機付け
- 持参された薬剤の整理等の薬学的管理を実施
- 必要に応じて患家訪問による服用薬の整理も実施(交通費は患者負担)
- 検査結果を踏まえた管理
- 患者の同意のもと、血液・生化学検査結果等を参考にした薬学的管理と指導
- 24時間対応体制
- 令和6年度改定前:24時間相談に応じる体制をとり、勤務表を作成して患者に渡す
- 令和6年度改定後:患者から休日、夜間を含む時間帯の相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝える
2024年度の調剤報酬改定では、24時間対応の要件が見直されました。以前は「24時間相談に応じる体制をとり」「勤務表を作成して患者に渡す」「当該保険薬剤師の連絡先を患者に伝える」という文言がありましたが、これらが削除され、より現実的な対応が可能となりました。
現在は、患者から休日・夜間を含む時間帯の相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝えることが求められています。原則としてかかりつけ薬剤師が相談に対応することとしていますが、薬局のかかりつけ薬剤師以外の別の保険薬剤師が相談等に対応しても差し支えないとされています。
かかりつけ薬剤師指導料の令和6年度改定のポイント
2024年(令和6年)度の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料に関して以下のような変更点がありました。
- 24時間対応の要件見直し
- 改定前:「24時間相談に応じる体制をとり」「勤務表を作成して患者に渡す」「当該保険薬剤師の連絡先を患者に伝える」
- 改定後:「患者から休日、夜間を含む時間帯の相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝える」
- 原則としてかかりつけ薬剤師が相談対応するが、かかりつけ薬剤師以外が対応しても可能に
- 連携する他の薬剤師の複数人対応
- 改定前:「1名までの保険薬剤師に限る」
- 改定後:この文言が削除され、複数人での対応が可能に
- 連携する他の薬剤師についても、あらかじめ患者の同意を得ておく必要あり
- 吸入薬指導加算の算定可能化
- 改定前:かかりつけ薬剤師指導料と吸入薬指導加算の同時算定不可
- 改定後:吸入薬に係る情報提供・服薬指導はかかりつけ薬剤師が通常行う業務の内容とは異なるとの判断から、同時算定可能に
- 3月に1回に限り30点を所定点数に加算可能
これらの改定により、より柔軟な体制でかかりつけ薬剤師制度を運用できるようになりました。特に24時間対応の要件緩和は、薬剤師の働き方改革の観点からも重要な変更点です。
また、かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が服薬指導を行った場合は、「服薬管理指導料の特例」として59点を算定できるようになりました。この場合、かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師は、患者の服薬状況や指導において注意すべき事項等の情報をかかりつけ薬剤師と共有する必要があります。
かかりつけ薬剤師指導料と地域支援体制加算の関連性
かかりつけ薬剤師指導料の算定は、地域支援体制加算を取得するための施設基準として重要な位置づけとなっています。地域支援体制加算は、地域包括ケアシステムの中で薬局が積極的な役割を果たすことを評価する加算です。
地域支援体制加算の施設基準には、「かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料の算定実績」が含まれており、これらの指導料・管理料を算定していることが加算取得の条件となっています。
具体的には、地域支援体制加算の施設基準において、以下のような要件があります。
- 算定実績の必要性
- 直近1年間において、かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料の算定実績があること
- 算定患者数の基準
- 地域支援体制加算1:かかりつけ薬剤師指導料等の算定患者が一定数以上
- 地域支援体制加算2・3:かかりつけ薬剤師指導料等の算定患者数の基準はやや緩和
- 地域連携の強化
- かかりつけ薬剤師が地域の医療機関等と連携し、患者の服薬情報を一元的・継続的に把握することで、地域包括ケアシステムの一翼を担う
このように、かかりつけ薬剤師指導料の算定は単に個々の患者への服薬指導の評価だけでなく、薬局全体の地域医療への貢献度を示す指標としても機能しています。地域支援体制加算を取得することで、調剤基本料に加算が付き、薬局経営にも大きく影響します。
地域支援体制加算を取得するためには、かかりつけ薬剤師の育成と活用が不可欠であり、薬局としての組織的な取り組みが求められます。かかりつけ薬剤師の活動を支援する体制を整備し、患者への丁寧な説明と同意取得を進めることが、地域医療における薬局の価値向上につながります。
かかりつけ薬剤師指導料と併算定できる加算・できない加算
かかりつけ薬剤師指導料を算定する際には、他の薬学管理料や加算との併算定の可否について理解しておく必要があります。以下に、併算定の可否をまとめました。
併算定できない薬学管理料
- 服薬管理指導料
- かかりつけ薬剤師包括管理料
- 服薬情報等提供料
服薬情報等提供料が算定できないのは、服薬情報等提供料にかかる業務がかかりつけ薬剤師が通常行う業務に含まれるためです。
併算定できる加算
- 麻薬管理指導加算(22点)
- 特定薬剤管理指導加算1(10点)
- 特定薬剤管理指導加算2(100点)
- 特定薬剤管理指導加算3(3点)
- 乳幼児服薬指導加算(12点)
- 小児特定加算(10点)
- 吸入薬指導加算(30点)※令和6年度改定で追加
これらの加算の取り扱いについては、服薬管理指導料の各加算に準じるとされています。特に吸入薬指導加算については、令和6年度改定で新たに算定可能となりました。
その他の注意点