
地域支援体制加算は、地域医療に貢献する薬局を評価するために設けられた調剤基本料の加算項目です。2018年の調剤報酬改定により基準調剤加算が廃止され、地域支援体制加算として新たに設けられました。
2024年度の診療報酬改定では、全ての区分で7点減点となり、それぞれの算定点数は以下のように変更されました。
地域支援体制加算を算定するためには、「実績要件」と「施設基準(体制要件)」の両方を満たす必要があります。実績要件は区分ごとに異なりますが、施設基準は全ての区分に共通のものとなっています。
特に注意すべき点として、特別調剤基本料Aを算定している薬局では、所定点数を100分の10にし、小数点以下第一位を四捨五入した点数を算定します。また、特別調剤基本料Bを算定している薬局は地域支援体制加算を算定できません。
地域支援体制加算は、調剤基本料の区分によって4つの算定区分に分類されており、それぞれ満たすべき実績要件が異なります。
地域支援体制加算1
地域支援体制加算2
地域支援体制加算3
地域支援体制加算4
2024年度の診療報酬改定では、調剤基本料1を算定する薬局(地域支援体制加算1・2)の実績要件が大幅に緩和されました。一方、調剤基本料1以外を算定する薬局(地域支援体制加算3・4)については、従来とほぼ同様の要件となっています。
地域支援体制加算の実績要件は10項目あり、それぞれ必要な実績回数が定められています。2024年度の改定では、調剤基本料1を算定する薬局と、それ以外の薬局で必要回数に大きな差がつけられました。
以下は、各実績要件の詳細と必要回数の比較です。
実績要件 | 調剤基本料1(加算1・2) | 調剤基本料1以外(加算3・4) |
---|---|---|
夜間・休日等の対応実績 | 40回以上 | 400回以上 |
麻薬の調剤実績 | 1回以上 | 10回以上 |
重複投薬・相互作用等防止加算等の実績 | 20回以上 | 40回以上 |
かかりつけ薬剤師指導料等の実績 | 20回以上 | 40回以上 |
外来服薬支援料1の実績 | 1回以上 | 12回以上 |
服用薬剤調整支援料の実績 | 1回以上 | 1回以上 |
単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績 | 24回以上 | 24回以上 |
服薬情報等提供料に相当する実績 | 30回以上 | 60回以上 |
小児特定加算の算定実績 | 1回以上 | 1回以上 |
薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議への出席 | 1回以上 | 5回以上 |
注目すべき点として、2024年度の改定では「小児特定加算の算定実績」が新たに追加されました。これは医療的ケア児に対する支援を評価するもので、全国で対象となる医療的ケア児は約2万人とされています。
また、「服薬情報等提供料に相当する実績」には、以下の項目も含めることができます。
2024年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算に関して多くの変更がありました。主な改定ポイントは以下の3つです。
1. 点数の変更
全ての区分で7点減点となりました。これにより、地域支援体制加算の算定による収益は減少することになります。
2. 実績要件の項目追加・必要な実績数の変更
3. 施設基準(体制要件)の変更・追加
以下の体制要件が新設されました。
これらの変更は、薬局のかかりつけ機能や地域医療への貢献をより重視する方向性を示しています。特に、施設基準の変更は健康サポート薬局に係る要件や健康増進法の規定を取り入れるなど、法律の壁を超えた要件化が進んでいることが特徴です。
地域支援体制加算の実績要件を満たすためには、計画的な取り組みが必要です。特に、実績が不足しがちな項目について、効果的な対策を講じることが重要です。
1. 服薬情報等提供料の実績を増やすためのアプローチ
服薬情報等提供料の実績は、年間1万回あたり、地域支援体制加算1・2では30件、加算3・4では60件必要です。この実績を増やすためには。
2. 在宅薬剤管理の実績を増やすための取り組み
単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績は、地域支援体制加算3では必須の要件となっています。この実績を増やすためには。
これらの算定を積極的に行うことが重要です。ただし、オンライン服薬指導の場合は回数に含めることができないため注意が必要です。
3. 新設された体制要件への対応
2024年度の改定で新設された体制要件に対応するためには。
これらの対応を計画的に進めることが必要です。
4. 経過措置の活用
2024年5月31日時点で地域支援体制加算の施設基準に係る届出を行っている薬局の場合、2024年8月31日までの間に限り、一部の要件を満たしているものとみなされる経過措置があります。この経過措置を活用しながら、新たな要件への対応を進めることが効果的です。
地域支援体制加算の算定には、実績要件を満たした上で適切なタイミングで届出を行うことが重要です。2024年度の調剤報酬改定後の地域支援体制加算の施設基準は、以下のように算定します。
経過措置を使えない場合(2024年4月以降に新規届出の場合)
当年6月1日から翌年5月末日までの間に、新たに施設基準に適合した場合は、直近1年間の実績をもって、届出の月の翌月(最初の開庁日に届け出ていれば当月)から、翌年5月末日まで所定点数を算定することができます。
経過措置を使う場合(2024年3月31日時点で既に施設基準を満たしている場合)
当年9月2日までの間に、前年8月1日から当年7月末日までの実績をもって施設基準の適合性を判断し、当年9月1日から翌年5月末日まで所定点数を算定できます。
いずれの場合も、算定できるのは翌年(2025年)5月末日までです。そのため、翌年(2025年)6月1日以降も地域支援体制加算を引き続き算定するためには、翌年(2025年)5月中に、前年(2024年)5月1日から当年(2025年)4月末日までの実績をもって施設基準の適合性を判断しなければなりません。
変更があればこのタイミングで届出を行い、変更がなければそのまま届出しなくても、当年(2025年)6月1日から翌年(2026年)5月末日まで所定点数を算定できます。
このように、地域支援体制加算の算定には計画的な実績の積み上げと、適切なタイミングでの届出が重要です。特に、実績要件の集計期間と届出のタイミングを正確に把握し、漏れなく対応することが求められます。
地域支援体制加算は、薬局のかかりつけ機能や地域医療への貢献を評価する重要な加算です。2024年度の診療報酬改定による変更点を正確に理解し、適切に対応することで、地域医療に貢献しながら適正な評価を受けることができます。