診療報酬の種類と仕組みや点数表の活用方法

診療報酬の種類と仕組みや点数表の活用方法

診療報酬の種類と仕組み

診療報酬制度の基本
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点数制度

診療行為ごとに点数が設定され、1点=10円で計算されます

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支払方式

出来高払い制と包括払い制の2種類があります

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改定サイクル

原則として2年ごとに見直しが行われます

診療報酬とは、医療機関が患者さんに提供した医療サービスに対して支払われる対価のことです。日本の医療制度では、この診療報酬は国が定めた「診療報酬点数表」に基づいて計算され、全国どこでも同じ医療行為には同じ報酬が支払われるように設定されています。

 

診療報酬は医療保険制度の根幹をなすもので、患者さんの自己負担分と保険者負担分に分けられます。患者さんは医療機関の窓口で自己負担分(一般的には3割、高齢者は1割または2割)を支払い、残りの保険者負担分は医療機関が審査支払機関を通じて請求する仕組みになっています。

 

診療報酬の基本分類と特徴

診療報酬は大きく分けて以下の3種類に分類されます。

  1. 医科診療報酬:病院やクリニックなどの医療機関で行われる診療行為に対する報酬
  2. 歯科診療報酬:歯科医院での治療に対する報酬
  3. 調剤報酬:保険薬局での調剤行為に対する報酬

これらはさらに細かく分類され、医科診療報酬は「基本診療料」と「特掲診療料」に大別されます。基本診療料には初診料、再診料、入院基本料などが含まれ、特掲診療料には検査、投薬、注射、処置、手術などの個別の医療行為に対する報酬が含まれます。

 

診療報酬点数表では、それぞれの医療行為に対して点数が設定されており、1点は10円として計算されます。例えば、初診料が288点であれば、2,880円となります。

 

診療報酬の支払い方式と計算方法

診療報酬の支払い方式には、「出来高払い制」と「包括払い制」の2種類があります。

 

出来高払い制は、実際に行った医療行為ごとに点数を加算して診療報酬を計算する方式です。例えば、診察、検査、投薬など、患者さんに提供した医療サービスの内容に応じて点数が加算されていきます。日本の医療制度では、外来診療を中心に、この出来高払い制が基本となっています。

 

出来高払い制の計算例。

  • 初診料:288点
  • 血液検査:125点
  • レントゲン検査:85点
  • 処方箋料:68点
  • 合計:566点(5,660円)

一方、包括払い制は、診断群分類(DPC/PDPS)などに基づいて、一定期間の医療サービスに対して定額の報酬を支払う方式です。主に入院医療で採用されており、疾患や処置の内容によってあらかじめ定められた点数が適用されます。

 

包括払い制では、入院期間や疾患の重症度、年齢などによって点数が決まるため、同じ疾患でも患者さんの状態によって診療報酬が異なることがあります。

 

診療報酬点数表の構成と活用法

診療報酬点数表は、医療行為の種類や内容に応じて細かく分類されています。薬剤師が特に関わる部分としては、調剤報酬点数表があります。

 

調剤報酬点数表の主な構成。

  • 調剤基本料
  • 薬学管理料
  • 調剤料
  • 薬剤料
  • 特定保険医療材料料

これらの点数は、処方箋の内容や患者さんの状態、薬局の体制などによって異なります。例えば、調剤基本料は薬局の規模や処方箋の応需状況によって異なる点数が設定されています。

 

薬剤師が診療報酬点数表を活用する際のポイント。

  1. 最新の改定内容を常に把握しておく
  2. 算定要件を正確に理解する
  3. 患者さんの状態や処方内容に応じた適切な算定を行う
  4. 記録の適切な管理と保存

診療報酬点数表を正しく理解し活用することで、適切な報酬請求が可能になるだけでなく、患者さんに提供する医療サービスの質の向上にもつながります。

 

診療報酬請求の流れと審査のポイント

診療報酬の請求は、医療機関が月末に締めて翌月10日までに審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会)に請求書(レセプト)を提出することから始まります。

 

請求の流れ。

  1. 医療機関が患者さんに医療サービスを提供
  2. 患者さんは窓口で自己負担分を支払う
  3. 医療機関は月末に診療報酬明細書(レセプト)を作成
  4. 翌月10日までに審査支払機関にレセプトを提出
  5. 審査支払機関がレセプトを審査
  6. 審査完了後、保険者にレセプトを送付
  7. 保険者から審査支払機関を通じて医療機関に診療報酬が支払われる(診療月の約2ヶ月後)

審査のポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 突合点検:同一患者の医科レセプトと調剤レセプトを突き合わせて、処方された薬剤と傷病名の適応関係などを確認
  • 縦覧点検:同一患者の複数月のレセプトを並べて、算定回数制限のある検査や処置などが適切に算定されているかを確認
  • 資格確認:患者さんの保険資格が有効かどうかを確認

審査の結果、問題がなければそのまま支払いが行われますが、問題があると判断された場合は「減点」や「返戻」という処理が行われます。減点は請求点数から一部が減額される処理、返戻はレセプト自体が返却され再提出が必要となる処理です。

 

診療報酬改定の仕組みと最新動向

診療報酬は原則として2年に1回、偶数年の4月に改定されます。改定は中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を踏まえて厚生労働大臣が決定します。

 

改定のプロセス。

  1. 社会保障審議会医療保険部会・医療部会で改定の基本方針を議論
  2. 中医協で具体的な点数設定や算定要件について議論
  3. 厚生労働大臣が改定内容を決定・告示

最新の2024年度診療報酬改定では、医療DXの推進や医師の働き方改革への対応、かかりつけ医機能の強化などが重点項目となっています。特に薬剤師に関連する改定としては、対物業務から対人業務へのシフトを促進するための点数の見直しや、薬局におけるオンライン服薬指導の評価の充実などが行われています。

 

また、近年の改定では、医療の質の向上と効率化を両立させるための取り組みが重視されており、アウトカム評価(結果に基づく評価)の導入や、多職種連携の推進などが進められています。

 

薬剤師としては、これらの改定動向を常に把握し、自らの業務に反映させていくことが求められています。特に、患者さんの薬物療法の安全性と有効性を高めるための薬学的管理・指導の重要性が増しており、それに応じた診療報酬の評価も充実してきています。

 

診療報酬制度における薬剤師の役割と今後の展望

診療報酬制度において、薬剤師の役割は年々重要性を増しています。従来の調剤業務中心の役割から、患者さんの薬物療法全体を管理・支援する役割へと拡大しています。

 

薬剤師の主な役割。

  1. 適切な調剤と服薬指導
  2. 重複投薬・相互作用のチェック
  3. 副作用モニタリングと対応
  4. 在宅患者への薬学的管理・指導
  5. 多職種連携による薬物療法の最適化

これらの役割に対応して、診療報酬においても様々な加算が設けられています。例えば、かかりつけ薬剤師指導料、服薬情報等提供料、薬剤総合評価調整管理料などがあります。

 

今後の展望としては、以下のような方向性が考えられます。

  1. 対人業務の更なる評価の充実:患者さんの状態に応じた薬学的管理・指導の重要性が高まり、それに対する評価が充実していくことが予想されます。

     

  2. ICTを活用した業務の評価:オンライン服薬指導やPHRの活用など、デジタル技術を活用した薬剤師業務に対する評価が進むでしょう。

     

  3. アウトカム評価の導入:単に業務を行ったことに対する評価だけでなく、その結果として患者さんの状態がどう改善したかという成果に基づく評価が重視されるようになると考えられます。

     

  4. 地域包括ケアシステムにおける役割の拡大:在宅医療や介護との連携など、地域全体での患者さんのケアにおける薬剤師の役割が拡大し、それに応じた診療報酬の評価も充実していくでしょう。

     

薬剤師が診療報酬制度を正しく理解し活用することは、患者さんに質の高い医療サービスを提供するためだけでなく、薬局経営の安定化や薬剤師の職能の発展にもつながります。常に最新の情報を収集し、自らの知識とスキルを高めていくことが重要です。

 

また、診療報酬制度は医療政策の重要なツールでもあるため、制度の変更は医療提供体制全体に大きな影響を与えます。薬剤師も医療チームの一員として、これらの変化に適応し、自らの役割を果たしていくことが求められています。

 

診療報酬制度は複雑で常に変化していますが、その基本的な仕組みと考え方を理解することで、日々の業務に活かすことができます。患者さんのために最適な医療を提供するという目標に向けて、診療報酬制度を適切に活用していきましょう。