服薬情報等提供料1の算定と点数と要件の違い

服薬情報等提供料1の算定と点数と要件の違い

服薬情報等提供料1の算定と点数

服薬情報等提供料1の基本情報
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算定点数

30点(月1回限り算定可能)

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算定要件の基本

医療機関からの求めに応じて、患者の同意を得た上で文書による情報提供を行う

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2024年度改定ポイント

薬剤服用歴への記録が不要になり、情報提供先に歯科が含まれることが明確化

服薬情報等提供料は、薬剤師が調剤後も患者さんの服薬状況を把握し、医療機関へ情報提供を行った場合に算定できる薬学管理料です。特に服薬情報等提供料1は、医療機関からの求めに応じて情報提供を行った場合に算定できる重要な項目となっています。

 

2024年度(令和6年度)の調剤報酬改定では、服薬情報等提供料にいくつかの変更点がありました。服薬情報等提供料1については、薬剤服用歴への記録が不要になるなどの変更がありましたが、基本的な算定要件は維持されています。

 

服薬情報等提供料1の算定要件と点数の詳細

服薬情報等提供料1は、30点が算定でき、月1回に限り算定が可能です。算定するためには以下の条件を満たす必要があります。

 

  • 保険医療機関からの求めがあること
  • 患者の同意を得ていること
  • 文書による情報提供を行うこと

情報提供の内容としては、以下のような項目が含まれます。

  1. 患者さんの服用薬と服薬状況
  2. 患者さんに行った服薬指導の要点
  3. 服用期間中の患者さんの状態変化など、自覚症状がある場合は原因の可能性となる薬剤の推定
  4. 患者さんが容易にまたは継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報

具体的な算定場面としては、次のようなケースが挙げられます。

  • 医療機関が残薬報告を求めている場合
  • 分割調剤やリフィル処方箋による調剤において、2回目以降の調剤時に患者さんの服薬状況、体調の変化等について確認し、処方医へ情報提供を行った場合
  • 入院前の患者さんの服用薬について確認し、依頼元の医療機関に情報提供した場合

服薬情報等提供料1と2、3の違いと使い分け

服薬情報等提供料には1、2、3の3種類があり、それぞれ算定要件と点数が異なります。

 

種類 点数 主な算定要件 算定可能回数
服薬情報等提供料1 30点 医師からの求めがあった場合 月1回
服薬情報等提供料2 20点 薬剤師が必要と判断した場合 月1回
服薬情報等提供料3 50点 入院予定患者の情報提供 3ヶ月に1回

服薬情報等提供料1は医師からの求めに応じて情報提供を行う場合に算定します。一方、服薬情報等提供料2は薬剤師の判断で情報提供が必要と考えた場合や、患者さんやその家族から求めがあった場合に算定できます。

 

2024年度の改定では、服薬情報等提供料2が3区分に明確化され、リフィル処方箋に基づく調剤後の情報提供や介護支援専門員への情報提供が追加されました。

 

服薬情報等提供料3は、入院を予定している患者さんについて医療機関から情報提供の求めがあった場合に算定できるもので、点数も50点と高くなっています。

 

同一患者に対して、服薬情報等提供料1〜3をそれぞれ同一月に算定することは可能ですが、同一の情報を同一保険医療機関に対して提供した場合は重複して算定できません。

 

服薬情報等提供料1の算定における注意点と禁忌

服薬情報等提供料1を算定する際には、以下の点に注意が必要です。

  1. かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している場合は、算定できません。

     

  2. 特別調剤基本料を算定している場合は、一部を除き算定できません。特に、情報提供先が特別な関係を有する医療機関である場合(敷地内薬局から敷地内医療機関への情報提供の場合)は算定できません。

     

  3. 情報提供は文書で行う必要があり、口頭のみの情報提供では算定できません。

     

  4. 患者さんの同意を得ることが必須条件です。同意なしでの情報提供は算定対象外となります。

     

  5. 算定は患者さんが次に来局した際に行います。情報提供を行っただけでは算定できないので注意が必要です。

     

服薬情報等提供料1の算定を増やすための実践的アプローチ

服薬情報等提供料1の算定を増やすためには、「医療機関の求め」が必要という点がネックになることがあります。しかし、受け身の姿勢ではなく、薬局から積極的に医療機関にアプローチすることで算定機会を増やすことが可能です。

 

具体的なアプローチ方法

  1. 薬局の持つ情報の価値をアピールする
    • 薬局がどのような情報を持っているのかを医療機関に具体的に伝える
    • 患者さんの服薬状況や副作用の有無など、医療機関が知りたい情報を提案する
  2. 医療機関のニーズを引き出す
    • 「〇〇薬を初めて処方された患者さんについて、服薬状況を報告しましょうか?」など具体的な提案をする
    • 特定の疾患や薬剤に関する情報提供の仕組みを提案する
  3. 情報提供のテンプレートを用意する
    • 医療機関が求める情報を効率的に提供できるよう、テンプレートを準備しておく
    • 残薬状況、副作用の有無、服薬アドヒアランスなど、必要な情報を網羅したフォーマットを作成する
  4. 定期的な連携会議の開催
    • 地域の医療機関と定期的に連携会議を開き、どのような情報が必要かを話し合う
    • 顔の見える関係を構築することで、情報提供の依頼を受けやすくなる

医療機関からの「求め」を引き出すことも算定要件の一つと捉え、積極的に医療機関にアピールする姿勢が重要です。

 

服薬情報等提供料1の算定事例と効果的な文書作成のポイント

実際の算定事例を見ながら、効果的な情報提供文書の作成ポイントを紹介します。

 

残薬報告の場合の事例
医療機関から残薬の報告を求められた場合、単に「〇〇錠が△錠残っています」という報告だけでは不十分です。以下のような情報を含めることで、より価値のある情報提供になります。

  • 残薬が生じている理由(飲み忘れ、副作用による服用中断など)
  • 残薬が生じないための対策(一包化、服薬カレンダーの活用など)
  • 患者さんの服薬に対する意識や理解度

文書作成のポイント

  1. 簡潔明瞭に記載する
    • 医師が短時間で内容を把握できるよう、要点を簡潔にまとめる
    • 重要な情報は太字や下線で強調する
  2. 具体的な数値や事実を記載する
    • 「コンプライアンスが悪い」ではなく「7日間で3回服用を忘れている」など具体的に
    • 患者さんの言葉をそのまま引用するなど、具体的な状況を伝える
  3. 薬学的な視点を加える
    • 単なる事実の報告だけでなく、薬剤師としての見解や提案を加える
    • 例:「〇〇錠と△△錠を同時に服用することで吸収が低下している可能性があります」
  4. フォローアップの予定を記載する
    • 「次回来局時に再度確認します」など、継続的な関わりを示す
    • 必要に応じて、次回の情報提供の予定も記載する

これらのポイントを押さえた情報提供文書を作成することで、医療機関からの評価も高まり、継続的な情報提供の依頼につながります。

 

参考:日本薬剤師会「令和6年度調剤報酬改定における服薬情報等提供料の解説」
服薬情報等提供料1の算定を増やすことは、単に薬局の収益向上だけでなく、患者さんの薬物療法の質の向上や医療機関との連携強化にもつながります。積極的な情報提供を通じて、地域医療における薬局・薬剤師の存在価値を高めていくことが重要です。

 

医療機関との連携を深め、患者さんの服薬状況を適切に把握・報告することで、薬物療法の安全性と有効性の向上に貢献しましょう。服薬情報等提供料1の算定は、そのための重要なツールの一つとなります。

 

また、2024年度の調剤報酬改定で薬剤服用歴への記録が不要になったことで、業務の効率化も期待できます。この機会に服薬情報等提供料1の算定に積極的に取り組み、薬局の機能と価値を高めていきましょう。