服用薬剤調整支援料1と2の違いと算定要件の解説

服用薬剤調整支援料1と2の違いと算定要件の解説

服用薬剤調整支援料1と2の違い

服用薬剤調整支援料の基本
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目的の違い

服用薬剤調整支援料1はポリファーマシー解消が目的、服用薬剤調整支援料2は重複投薬解消が目的

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算定要件の違い

1は実際に減薬が必要、2は提案のみで算定可能

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算定頻度

1は月1回、2は3ヶ月に1回まで算定可能

服用薬剤調整支援料は、薬剤師がポリファーマシー対策や重複投薬の解消に向けた取り組みを評価する薬学管理料です。近年、特に高齢者における多剤服用の問題が注目される中、薬剤師の対人業務として重要性が増しています。この支援料には1と2の2種類があり、それぞれ目的や算定要件が異なります。

 

服用薬剤調整支援料1と2の基本的な違い

服用薬剤調整支援料1と2の最も大きな違いは、その目的と算定要件にあります。

 

服用薬剤調整支援料1は「ポリファーマシーの解消」を主な目的としています。内服薬を4週間以上服用している患者さんで、6種類以上の薬剤を服用している場合に、薬剤師が患者さんの意向を踏まえて減薬の提案を行い、実際に2種類以上の薬剤が減薬され、その状態が4週間以上継続した場合に算定できます。

 

一方、服用薬剤調整支援料2は「重複投薬の解消」に重点を置いています。複数の医療機関から合計6種類以上の内服薬が処方されている患者さんに対して、重複投薬の解消に向けた取り組みを行った場合に算定できます。服用薬剤調整支援料2の場合は、実際に減薬が実現しなくても、提案を行うだけで算定が可能です。

 

服用薬剤調整支援料1の算定要件とポイント

服用薬剤調整支援料1の算定要件は以下の通りです。

  • 内服薬6種類以上を服用している患者さんが対象
  • 内服開始から4週間以上経過していること
  • 患者さんの意向を踏まえること
  • 服薬アドヒアランスや副作用の可能性を検討すること
  • 処方医に減薬の提案を行うこと
  • 内服薬が2種類以上減少すること(うち少なくとも1種類は薬剤師が提案したもの)
  • 減薬状態が4週間以上継続すること

算定点数は125点で、月1回に限り算定可能です。

 

減薬の提案を行った時点ではなく、実際に減薬が行われ、その状態が4週間以上継続したことを確認した時点で算定します。減薬は必ずしも同時に2種類以上行う必要はなく、徐々に減薬していき、最終的に2種類以上減薬された時点で算定することも可能です。

 

服用薬剤調整支援料2の算定要件とイ・ロの区分

服用薬剤調整支援料2の算定要件は以下の通りです。

  • 複数の医療機関から合計6種類以上の内服薬が処方されている患者さんが対象
  • 患者さんやその家族からの希望があること
  • 服用薬の一元管理(手帳確認、聞き取り等)を行うこと
  • 同種・同効薬が処方されている場合は処方背景を確認すること
  • 重複投薬の恐れがある場合は解消に係る提案を検討すること
  • 報告書を作成し処方医へ送付すること
  • 次回来局時に処方内容の見直し状況を確認すること

服用薬剤調整支援料2には「イ」と「ロ」の2区分があり、それぞれ点数が異なります。

  • イ:施設基準を満たす薬局が行った場合 - 110点
  • ロ:イ以外の場合 - 90点

算定頻度は3ヶ月に1回に限られています。

 

服用薬剤調整支援料1と2の算定タイミングの違い

服用薬剤調整支援料1と2では、算定のタイミングが大きく異なります。

 

服用薬剤調整支援料1は、減薬の提案を行い、実際に減薬が行われ、その状態が4週間以上継続したことを確認した時点で算定します。つまり、提案から実際の算定までには少なくとも4週間以上の期間が必要となります。

 

一方、服用薬剤調整支援料2は、重複投薬の解消に向けた取り組みを行い、報告書を処方医に送付した時点で算定可能です。実際に処方内容が変更されたかどうかは算定の要件ではありませんが、次回来局時に処方内容の見直し状況を確認する必要があります。

 

ただし、同一月内に複数の医療機関に対して重複投薬等の解消に係る提案を行った場合でも、同一患者について算定できるのは1回のみです。

 

服用薬剤調整支援料1と2の併算定に関する注意点

服用薬剤調整支援料1と2の併算定については、以下の点に注意が必要です。

 

重複投薬等の解消に係る提案を行い、服用薬剤調整支援料2を算定した後に、次回受診時に2種類以上減薬された場合、服用薬剤調整支援料1の要件を満たすことになります。しかし、この場合でも服用薬剤調整支援料1を算定することはできません。

 

厚生労働省の事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1) 令和2年3月31日」では、服用薬剤調整支援料2を算定した後に、服用薬剤調整支援料1の要件を満たしても、服用薬剤調整支援料1は算定できないと明記されています。

 

これは、同一の取り組みに対して二重評価とならないようにするための規定と考えられます。

 

服用薬剤調整支援料の令和6年度改定ポイント

令和6年(2024年)度の診療報酬改定において、服用薬剤調整支援料に関する変更点があるかどうかを確認しておくことも重要です。

 

最新の改定情報によると、服用薬剤調整支援料の基本的な仕組みや算定要件に大きな変更はありませんが、地域支援体制加算の要件として服用薬剤調整支援料の算定実績が引き続き重視されています。

 

薬局薬剤師として、ポリファーマシー対策や重複投薬の解消に積極的に取り組むことが求められており、服用薬剤調整支援料の適切な算定は、患者さんの薬物療法の質の向上だけでなく、薬局経営の観点からも重要です。

 

以下に、服用薬剤調整支援料1と2の主な違いを表にまとめました。

項目 服用薬剤調整支援料1 服用薬剤調整支援料2
目的 ポリファーマシー解消 重複投薬解消
対象患者 内服開始後4週間以上経過した内服薬6種類以上を薬局で調剤している患者 複数の医療機関から内服薬を6種類以上処方されている患者
算定点数 125点(月1回) イ:110点 ロ:90点(3ヶ月に1回)
算定要件 内服薬が2種類以上減少し、その状態が4週間以上継続 重複投薬解消のための取り組みを行った場合
患者の意向 確認必要
減薬の必要性 あり なし

服用薬剤調整支援料の効果的な活用事例

服用薬剤調整支援料を効果的に活用するためには、実際の事例を知ることが役立ちます。以下に、服用薬剤調整支援料1と2の活用事例を紹介します。

 

【事例1:服用薬剤調整支援料1の活用】
75歳の男性患者さん。高血圧、糖尿病、脂質異常症などで複数の医療機関を受診し、合計8種類の内服薬を服用していました。薬剤師が服薬状況を確認したところ、同効薬の重複や長期間使用しているにもかかわらず効果が不明確な薬剤があることがわかりました。

 

患者さんの同意を得た上で、かかりつけ医に減薬の提案を行いました。その結果、同効薬の1種類と効果が不明確だった1種類、計2種類の薬剤が減薬されました。減薬後4週間経過した時点で状態に問題がないことを確認し、服用薬剤調整支援料1を算定しました。

 

【事例2:服用薬剤調整支援料2の活用】
68歳の女性患者さん。内科、整形外科、眼科を受診しており、合計7種類の内服薬を服用していました。お薬手帳を確認したところ、内科と整形外科から同じ成分の消炎鎮痛剤が処方されていることが判明しました。

 

患者さんに状況を説明し、同意を得た上で、各医療機関に重複投薬の状況を報告しました。整形外科医師に連絡し、内科での処方状況を伝えたところ、次回処方時に見直す旨の回答を得ました。この時点で服用薬剤調整支援料2を算定し、次回来局時に処方内容の変更状況を確認しました。

 

これらの事例からわかるように、服用薬剤調整支援料の算定には、患者さんの服薬状況の丁寧な確認と、医師との適切なコミュニケーションが不可欠です。

 

服用薬剤調整支援料と重複投薬・相互作用等防止加算の使い分け

服用薬剤調整支援料と似た算定項目として、「重複投薬・相互作用等防止加算」があります。これらの違いと使い分けについても理解しておくことが重要です。

 

重複投薬・相互作用等防止加算は、処方せん受付時に、重複投薬や相互作用の可能性を発見し、処方医に疑義照会を行った結果、処方が変更された場合に算定できる加算です。一方、服用薬剤調整支援料は、多剤服用患者に対するより包括的な介入を評価するものです。

 

主な違いは以下の通りです。

  • 重複投薬・相互作用等防止加算:処方せん単位での評価、疑義照会が前提
  • 服用薬剤調整支援料:患者単位での評価、患者の意向を踏まえた提案が前提

例えば、処方せん受付時に重複投薬を発見し、疑義照会により処方変更された場合は重複投薬・相互作用等防止加算を算定します。一方、複数の医療機関からの処方を含めた包括的な評価に基づく提案の場合は、服用薬剤調整支援料を算定することになります。

 

薬剤師は、患者さんの状況に応じて適切な算定項目を選択し、ポリファーマシー対策や重複投薬の解消に取り組むことが求められています。

 

服用薬剤調整支援料1と2の違いを理解し、適切に算定することで、患者さんの薬物療法の質の向上に貢献するとともに、薬局の収益向上にもつながります。日々の業務の中で、多剤服用患者さんに対する介入の機会を見逃さないよう、常に意識することが大切です。