
薬剤師が提供する薬学的管理サービスには様々な種類があり、それぞれに対応する報酬算定項目が設定されています。しかし、これらの薬学管理料は全てを同時に算定できるわけではなく、特定の組み合わせでは同時算定が認められていません。正確な請求を行うためには、同時算定できない薬学管理料の組み合わせを理解することが重要です。
薬学管理料の中には、同一患者に対して同時に算定できない組み合わせがいくつか存在します。主な組み合わせは以下の通りです。
これらの組み合わせは同一月内での算定が制限されているため、患者さんの状態や処方内容に応じて、最適な算定方法を選択する必要があります。
在宅医療を受けている患者さんに対する薬学管理料の算定には特に注意が必要です。居宅療養管理指導料と薬剤服用歴管理指導料の関係について、以下のルールが適用されます。
同一月における算定ルール。
例えば、高血圧の治療薬について居宅療養管理指導を行っている患者さんが、風邪をひいて臨時で抗生物質が処方された場合、その臨時処方に対しては薬剤服用歴管理指導料を算定できます。
在宅移行時の注意点。
外来から在宅医療へ移行する同月内では、同じ疾患に対して居宅療養管理指導料と薬剤服用歴管理指導料の両方を算定することはできません。この場合、支払基金の見解によれば、基本料のみの算定にとどめておくことが推奨されています。
薬学管理料の算定においては、医療保険と介護保険の区分も重要な要素です。患者さんの状態によって適用される保険制度が異なるため、以下のポイントを理解しておく必要があります。
医療保険と介護保険の使い分け。
具体的な算定項目。
これらの区分を誤ると査定の対象となるため、患者さんの介護認定状況を正確に把握することが重要です。また、介護保険と医療保険の算定項目は同時に請求することはできないため、患者さんの状態に応じた適切な保険制度を選択する必要があります。
薬学管理料の同時算定に関しては、いくつかの例外規定が設けられています。特に臨時処方の取り扱いについては、以下のポイントを理解しておくことが重要です。
臨時処方に関する例外規定。
具体的な事例。
【事例】
8月6日:在宅患者の定時薬処方(高血圧薬)
→ 居宅療養管理指導料を算定
8月7日:肺炎で臨時処方(抗生物質)
→ 基本料+薬剤服用歴管理指導料を算定可能
このように、同一月内であっても管理している主たる疾患と明確に区別できる別の疾患に対する臨時処方であれば、両方の管理料を算定することが可能です。ただし、同一疾患に対する処方の場合は、同時算定はできないことに注意が必要です。
2024年度の診療報酬改定では、在宅医療に関する算定ルールにいくつかの変更がありました。薬学管理料の同時算定に関連する主な改定ポイントは以下の通りです。
在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定回数の見直し。
在宅患者オンライン薬剤管理指導料の変更。
これらの改定により、在宅医療における薬剤師の関与がさらに促進されることが期待されています。同時算定のルールを正確に理解し、適切な算定を行うことで、患者さんに質の高い薬学的管理を提供することができます。
薬学管理料の誤算定を防ぐためには、システム的な対策と知識の更新が重要です。以下に効果的な防止策をご紹介します。
レセコンシステムの活用。
算定チェックリストの作成。
定期的な研修と情報更新。
事例集の作成。
これらの対策を実施することで、同時算定できない薬学管理料の誤算定リスクを大幅に減らすことができます。また、定期的な自己点検を行うことで、算定ルールへの理解を深め、適切な請求業務を行うことができるでしょう。
薬学管理料の同時算定に関しては、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)からも明確な見解が示されています。これらの見解を理解することで、査定リスクを減らし、適切な算定を行うことができます。
支払基金の基本的な見解。
外来から在宅への移行時の取り扱い。
具体的な判断基準。
支払基金の見解は地域によって若干の解釈の違いがある場合もあるため、不明点がある場合は地域の支払基金に直接確認することをお勧めします。また、査定を受けた場合の再審査請求に備えて、算定の根拠となる資料(薬学的管理指導計画書や処方内容の記録など)を適切に保管しておくことも重要です。
在宅医療に関連する算定項目として、在宅患者調剤加算についても理解しておく必要があります。この加算は在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導料と密接に関連しており、同時算定のルールが設定されています。
在宅患者調剤加算の概要。
同時算定のルール。
具体的な事例。
【事例】
8月6日:在宅患者の定時薬処方
→ 基本料+在宅患者調剤加算+居宅療養管理指導料
8月7日:同じ在宅患者の臨時処方(別疾患)
→ 基本料+在宅患者調剤加算+薬剤服用歴管理指導料
このように、在宅患者調剤加算は薬学管理料の種類に関わらず、在宅患者に対する調剤であれば算定可能です。ただし、在宅患者が外来で来局した場合は、その時点では在宅患者調剤加算は算定できないことに注意が必要です。
在宅患者調剤加算の算定率は年々増加しており、2022年度には薬局全体の37%が届出を提出しています。在宅医療の需要が高まる中、この加算の適切な算定方法を理解することは、薬局経営においても重要なポイントとなっています。
薬学管理料の同時算定に関するルールをより具体的に理解するために、いくつかの代表的な事例とその算定方法について解説します。
事例1:慢性疾患の在宅患者に臨時処方があった場合
【患者情報】
- 要介護3の認定を受けている80歳男性
- 高血圧、糖尿病で定期的に居宅療養管理指導を受けている
【処方状況】
- 4月10日:定期処方(高血圧薬、糖尿病薬)
- 4月20日:風邪症状による臨時処方(抗生物質、解熱鎮痛剤)
【算定方法】
- 4月10日:居宅療養管理指導費(566単位)
- 4月20日:薬剤服用歴管理指導料(43点)
※風邪は薬学的管理指導計画に含まれない別疾患のため
事例2:外来から在宅へ移行した患者の場合
【患者情報】
- 75歳女性、要介護認定なし
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