服薬情報等提供料3の算定と入院前の患者情報提供の要件

服薬情報等提供料3の算定と入院前の患者情報提供の要件

服薬情報等提供料3の算定について

服薬情報等提供料3の基本情報
??
点数

50点(3ヶ月に1回限り算定可能)

??
主な対象

入院予定の患者さん

??
必須条件

医療機関からの求め・患者の同意・文書による情報提供

服薬情報等提供料3は、2022年度の診療報酬改定で新設された比較的新しい薬学管理料です。入院前の患者さんの服薬情報を一元的に把握し、医療機関に情報提供することで、入院中の薬物治療の安全性と有効性を高めることを目的としています。

 

この記事では、服薬情報等提供料3の算定要件や情報提供の内容、算定時の注意点などについて詳しく解説します。薬剤師として適切に算定し、患者さんの薬物治療の質向上に貢献しましょう。

 

服薬情報等提供料3の算定要件と点数

服薬情報等提供料3は50点で、3ヶ月に1回に限り算定することができます。算定するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

 

  1. 入院予定の患者に関する保険医療機関からの求めがあること
    • 入院予定の医療機関からの求めだけでなく、患者さんが受診している他の保険医療機関からの求めも含まれます
    • 医療機関からの求めは文書でなくても構いません
  2. 患者さんの同意を得ること
    • 患者さんのプライバシーに関わる情報を提供するため、必ず同意を得る必要があります
    • 同意は口頭でも構いませんが、記録に残しておくことをお勧めします
  3. 患者さんの服用薬の情報等を一元的に把握すること
    • 自薬局で調剤した薬剤だけでなく、他の薬局や医療機関で処方された薬剤も含めて把握する必要があります
    • 市販薬やサプリメントなどの情報も可能な限り収集します
  4. 必要に応じて患者さんが薬局に持参した服用薬の整理を行うこと
    • 重複投薬や相互作用のチェックを行い、必要に応じて整理します
    • 整理した内容も情報提供に含めます
  5. 保険医療機関に必要な情報を文書により提供すること
    • 情報提供は必ず文書で行う必要があります
    • FAXやメールなどの電子的な方法でも構いませんが、内容を記録として残しておく必要があります

厚生労働省の疑義解釈(2022年4月11日公表)によると、服薬情報等提供料3は「医療機関への情報提供時または患者の次回来局時に算定できる」とされています。つまり、情報収集と提供を行った後、患者さんが次回来局した際に算定することも可能です。

 

服薬情報等提供料3で提供すべき情報内容

服薬情報等提供料3を算定する際に、医療機関に提供すべき情報は以下の通りです。

 

  1. 受診中の保険医療機関、診療科等に関する情報
    • 患者さんがどの医療機関・診療科を受診しているか
    • 主治医の名前(わかる場合)
    • 最後に受診した日時(わかる場合)
  2. 服用中の薬剤の一覧
    • 薬剤名(商品名・一般名)
    • 用法・用量
    • 処方医療機関名
    • 処方日
    • 調剤薬局名(他薬局で調剤されたものがある場合)
  3. 患者さんの服薬状況
    • 服薬アドヒアランスの状況
    • 残薬の有無とその理由
    • 服薬上の問題点や工夫している点
    • 副作用の有無や自己調節の有無
  4. 併用薬剤等の情報
    • 一般用医薬品(OTC薬)
    • サプリメント・健康食品
    • その他の医薬品(湿布薬や点眼薬なども含む)

これらの情報を収集する際は、患者さんからの聞き取りだけでなく、お薬手帳や処方箋の履歴、他の薬局や医療機関への問い合わせなど、複数の情報源を活用することが重要です。特に、他の薬局で調剤された薬剤については、患者さんの同意を得た上で、必要に応じて他の薬局に問い合わせることも検討しましょう。

 

服薬情報等提供料3と他の薬学管理料との関係

服薬情報等提供料3を算定する際は、他の薬学管理料との関係にも注意が必要です。以下のような制限があります。

 

  1. 同時算定できない薬学管理料

これらの薬学管理料を算定している場合は、服薬情報等提供料3を算定することはできません。これは、これらの薬学管理料にすでに情報提供の要素が含まれているためです。

 

  1. 同一月の算定について
    • 服薬情報等提供料1、2、3は、それぞれ同一月に1回ずつ算定することが可能です
    • ただし、同一の情報を同一保険医療機関に対して提供した場合は重複して算定できません
  2. 特別調剤基本料を算定している場合
    • 特別調剤基本料を算定している薬局では、原則として算定できません
    • 特に、敷地内薬局から敷地内医療機関への情報提供の場合は算定不可です

これらの制限を理解し、適切に算定することが重要です。不適切な算定は、後日の監査で指摘される可能性がありますので注意しましょう。

 

服薬情報等提供料3の算定事例と実践ポイント

服薬情報等提供料3の具体的な算定事例と実践ポイントを紹介します。

 

【事例1】定期的に来局している患者さんの場合
Aさん(75歳、男性)は来月、膝の手術のために整形外科に入院予定です。整形外科から入院前の服薬情報の提供を求められました。

 

  1. 情報収集のポイント
    • 薬歴から過去の処方内容を確認
    • お薬手帳で他院からの処方を確認
    • 患者さんから市販薬やサプリメントの使用状況を聴取
    • 服薬状況や残薬の有無を確認
  2. 情報提供の内容
    • 高血圧と糖尿病の治療薬を服用中
    • 整形外科からの消炎鎮痛剤を服用中
    • 市販の胃腸薬を時々使用
    • 服薬状況は良好だが、消炎鎮痛剤は効果が弱いと感じ、時に2錠服用することがある
    • 残薬はほとんどなし
  3. 算定のタイミング
    • 情報提供を行った日、または次回来局時に算定

【事例2】初めて来局した患者さんの場合
Bさん(68歳、女性)は初めて来局し、来週入院予定の総合病院からの処方箋を持参。病院から服薬情報の提供を求められました。

 

  1. 情報収集のポイント
    • お薬手帳の確認(持参していない場合は患者さんに持参を依頼)
    • 他の薬局で調剤された薬剤について詳しく聴取
    • かかりつけ医や他の医療機関の受診状況を確認
    • 電話等で他の薬局に問い合わせ(患者さんの同意を得た上で)
  2. 情報提供の内容
    • 複数の医療機関から処方されている薬剤の一覧
    • 他の薬局で調剤された薬剤の情報
    • 服薬状況(特に飲み忘れや自己調節の有無)
    • 副作用歴や薬剤アレルギーの情報
  3. 算定のタイミング
    • 情報提供後、患者さんが退院後に来局した際に算定

実践ポイント

  • 情報収集は患者さんの負担にならないよう配慮しながら丁寧に行いましょう
  • 他の薬局や医療機関との連携を円滑に行うためのネットワーク作りも重要です
  • 情報提供書は見やすく、必要な情報が一目でわかるようにまとめましょう
  • 患者さんの同意書や情報提供書のテンプレートを準備しておくと効率的です
  • 算定漏れを防ぐため、情報提供を行った患者さんのリストを管理しましょう

服薬情報等提供料3の算定における注意点と対応策

服薬情報等提供料3を算定する際の注意点と、それに対する対応策を解説します。

 

1. 情報の網羅性と正確性
患者さんから得られる情報だけでは不十分なことがあります。特に高齢者の場合、服用している薬剤をすべて把握していないことも少なくありません。

 

対応策:

  • お薬手帳を必ず確認する
  • 家族や介護者からも情報を得る
  • 必要に応じて他の薬局や医療機関に問い合わせる
  • 電子お薬手帳や地域医療情報ネットワークがあれば活用する

2. 患者さんの同意取得
情報提供には必ず患者さんの同意が必要ですが、同意の取得方法や記録方法が不明確なことがあります。

 

対応策:

  • 同意取得の手順を明確にし、マニュアル化する
  • 同意書のテンプレートを作成しておく
  • 口頭での同意の場合も、その旨を薬歴に記録する
  • 同意の範囲(どの情報をどこに提供するか)を明確にする

3. 情報提供のタイミング
入院前の限られた時間で情報収集と提供を行う必要があるため、時間的制約が大きいことがあります。

 

対応策:

  • 医療機関との連携体制を事前に構築しておく
  • 情報提供書のテンプレートを準備しておく
  • 緊急時の対応手順を決めておく
  • 可能であれば、入院前の患者さんを把握するシステムを構築する

4. 算定漏れの防止
情報提供は行ったものの、算定を忘れてしまうケースがあります。

 

対応策:

  • 情報提供を行った患者さんのリストを作成し管理する
  • レセプトチェックの際に確認する項目に加える
  • 算定条件を満たしているかのチェックリストを作成する
  • 薬歴システムにアラート機能がある場合は活用する

5. 他の薬学管理料との関係
かかりつけ薬剤師指導料などと同時算定できないため、どちらを算定するか判断が必要な場合があります。

 

対応策:

  • 患者さんにとって最適な選択を考慮する
  • 長期的な関係性を重視する場合はかかりつけ薬剤師指導料を優先
  • 一時的な入院に対する情報提供の場合は服薬情報等提供料3を選択
  • 算定ルールを薬局内で共有し、統一した対応を行う

これらの注意点を理解し、適切に対応することで、服薬情報等提供料3を正しく算定し、患者さんの薬物治療の安全性向上に貢献することができます。

 

服薬情報等提供料3の今後の展望と薬剤師の役割

服薬情報等提供料3は2022年度に新設された比較的新しい項目ですが、今後の医療提供体制の変化に伴い、さらに重要性が増すと考えられます。ここでは、服薬情報等提供料3の今後の展望と薬剤師の役割について考察します。

 

1. 地域包括ケアシステムにおける位置づけ
地域包括ケアシステムの推進により、在宅医療と入院医療の連携がますます重要になっています。入院前の服薬情報の一元的な把握と提供は、シームレスな医療提供の鍵となります。

 

薬剤師は、地域と病院をつなぐ「薬の専門家」として、その架け橋の役割を担うことが期待されています。服薬情報等提供料3はその役割を評価する仕組みとして、今後さらに活用されるでしょう。

 

2. 電子的な情報連携の進展
現在は紙の文書による情報提供が基本ですが、今後はオンライン資格確認等システムや電子処方箋の普及に伴い、電子的な情報連携が進むと予想されます。

 

これにより、より迅速かつ正確な情報提供が可能になり、服薬情報等提供料3の算定プロセスも効率化されるでしょう。薬剤師はこうした電子的なツールを活用する能力も求められます。

 

3. 薬局薬剤師と病院薬剤師の連携強化
服薬情報等提供料3を通じて、薬局薬剤師と病院薬剤師の連携が強化されることが期待されます。入院前の情報提供だけでなく、退院時の情報共有や継続的な薬学的管理の連携など、双方向のコミュニケーションが重要になります。

 

薬剤師同士の「顔の見える関係」を構築することで、より質の高い薬学的管理が実現できるでしょう。

 

4. 薬剤師の臨床能力の向上
服薬情報等提供料3を適切に算定するためには、患者さんの服薬状況を正確に評価し、臨床的に重要な情報を抽出する能力が必要です。これは単なる事務的な作業ではなく、高度な臨床判断を要する業務です。

 

薬剤師は継続的な学習と臨床経験の蓄積を通じて、こうした能力を高めていくことが求められます。

 

5. 医療経済的な視点
入院